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国の核融合科学研究所(NIFS)1億度を超える高温プラズマ生成に成功。核融合発電の実現へ一歩前進と公表(RIEF)

2017-04-23 00:11:23

nuke2キャプチャ

 自然科学研究機構・核融合科学研究所(NIFS、岐阜県土岐市)は、核融合エネルギー発電の実用化に向けた重水素実験で、従来の最高温度を上回る、初の1億度超の高温のプラズマを作り出すことに成功したと発表した。核融合発電の実用化には1億2000度が必要とされるが、それに一歩近づいた。

 核融合は軽い核種同士が融合してより重い核種になる反応をいう。その融合反応の際に出るエネルギーを利用して発電するのが核融合発電とされる。

 現在の原子炉は核分裂反応で起きる熱を利用して発電する。核分裂の連鎖反応は暴走しないように慎重に制御する必要がある。旧ソ連でのチェルノブイリ原発事故や、日本の1999年9月の茨城県東海村でのJCO事故などは、その制御に失敗した事例だ。

 これに対して核融合の場合、一回の反応で、核分裂反応よりも大きいエネルギーを取り出せるほか、核分裂のように連鎖反応がないことから暴走が原理的に生じないとされる。また高濃度放射性廃棄物の発生量が少ない、水素などを原料にできるので安価で発電できるなどの利点がある。

purazumaキャプチャ

 ただ、超高温で超高真空という物理的な条件が必要で、実験段階から実用段階まで、いずれも巨大施設が必要で、莫大な資金がネックとなる。さらに1億度以上の高温でないと十分な反応が起きず、またそうした高温度に耐えられる融合炉等の開発などの技術的課題も抱えている。

 今回のNIFSの実験成果は、こうした課題の一つである高温度の状態を作り出すことに成功した点にある。実験は、3月7日から、わが国独自のアイデアに基づく世界最大級の超伝導核融合プラズマ実験装置の大型ヘリカル装置(LHD)を使って重水素実験を行った。その結果、今月15日に、2013年に従来の軽水素ガス実験で得られていた最高温度(9400万度)を上回る1億度超のイオン温度を達成した。

  LHDは高さ約9m、直径約13.5mの実験装置で、水素などを加熱してプラズマを生成する。プラズマは、原子を作る原子核と電子が超高温下でバラバラになって飛び回る状態で、その状態で原子核同士が衝突し、別の重い原子核になる核融合反応が起きる。重水素プラズマは軽水素プラズマより、プラズマの性能(温度等)が向上することが世界のトカマク型装置で確認されている。

  今回の実験では、コンクリート遮蔽壁の性能検査も実施し、十分な遮蔽性能があることを確認したとしている。また東電福島第一原発の事故処理で問題となっている汚染水のトリチウムについて、今回の実験では軽水素ガスを用いたトリチウム除去装置の試験運転で、95%以上の回収率を確認したとしている。

 NIFSの森崎友宏・大型ヘリカル装置計画研究総主幹は「目標温度の達成に向けてステップアップできた。重水素実験の成果が着実に出ている」と話している。

 

http://www.nifs.ac.jp/press/170421.html