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英国が先週の金曜日。平日では産業革命以来の「石炭無し電力日」を達成。2025年の石炭全廃に向け着実に成果。カーボン税が効果(RIEF)

2017-04-23 23:03:42

UK1キャプチャ

 

 英国が先週21日(金)に、平日としては産業革命以来、という石炭火力発電の電力抜きで、国中の電力をまかなうことができた。電力送電会社のNational Gridが公表した。英国は欧州連合(EU)からの離脱交渉に入ったが、「石炭からの離脱」は他のEU諸国よりも先行して成果をあげた形だ。

 

 National Gridのスポークスマンが4月21日にコントロールルームからのツィッターで明らかにした。「石炭電力無し」の状態は丸一日の24時間続いた。

 

(以下はNational Gridのツィッターのコメント)

 

 英国では昨年中に、3基の老朽石炭火力発電所を閉鎖する一方で、太陽光、風力等の再生可能エネルギー発電が着実に増加した。また火力発電所の燃料はガス転換が増えた。さらにカーボン税でCO2排出に高い価格が設定されており、既存の火力発電所も発電を続けることが経済的に不利になっている。

 

 CO2排出総量は昨年1800万㌧で、前年比5.8%減となった。減少には、石炭の使用が過去最大の52%減となったことが大きい。反対に同じ化石燃料でも、ガスは12.5%増、石油同1.6%増だった。国全体での排出量は90年比でも36%減と着実に減っている。

 

uk2キャプチャ

 

 一方、日本のCO2排出量は2015年度実績で前年比2.9%減となったが、90年比では4.0%増と逆に増加している。英国の努力に比べると、国際的に見劣りする水準にあり、日本の温暖化政策がこの間、実質的には進展していないことを映している。

 

 英国の2016年の石炭からのCO2排出量は10年前の2006年の1億3700万㌧の約8 分の1へと大幅に縮小している。石炭利用は2014年以降、3年連続で過去最低を記録している。16年の石炭使用減は、過去に英国で炭鉱ストライキで大幅生産減となった1921、26、84年の時に比べても上回っている。

 

 英政府は石炭使用減が確実に進む要因として、再エネの普及や、エネルギー転換の進展等の各種要因をあげる。そのうち、もっとも影響が大きいのは、15年にカーボン税を倍増してCO2排出1㌧当たり15ポンド(約2100円)に引き上げたことが効いた、と分析している。

 

 EU諸国は英国を含め、EU-ETS(EU排出権取引制度)によってカーボンに価格付けをしている。しかし、現在、同制度によるカーボン価格(EUA)は5ユーロ(約585円)前後で推移している。英国は別途、3.6倍に相当するカーボン税を課しており、これが石炭火力のコストアップを招き「石炭離れ」を加速している。英国の「石炭離脱」政策は、日本をはじめ、先進国の温暖化対策にとって、大いに参考になるといえる。

 

 一方で、英国は再エネ開発に力を入れている。すでに再エネの風力発電の発電量が石炭火力の発電量を上回っている。石炭火力による発電を2025年に全面停止する計画を公表しているが、目標の達成は現実味を帯びている。

 

 今回の「石炭火力ノーデー」の達成について、英国Greenpeaceのエネルギー担当者、Hannah Martin氏は、「10年前に英国で石炭なしで発電できるとは想像もできないことだった。次の10年間で英国のエネルギーシステムは、急速に転換するだろう」と期待を示している。

http://www2.nationalgrid.com/uk/

https://www.carbonbrief.org/analysis-uk-cuts-carbon-record-coal-drop