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電源開発(J-POWER) 兵庫・高砂市で計画中の石炭火力発電所新設計画を「当面延期か」。環境影響評価準備書提出せず。環境NGOや住民団体は歓迎(RIEF)

2017-04-26 19:22:24

JPOWERキャプチャ

 

  環境NGOの気候ネットワーク(KIKO)は、電源開発(J-POWER)が兵庫県高砂市で計画中の石炭火力発電所新設計画に大幅に遅れが生じることがわかった、と報じた。25日に開催された高砂市建設環境経済常任委員会で、同市生活環境部の担当者が「環境影響評価準備書の提出について、J-POWERより口頭で当面延期との報告を受けた」と説明したという。

 

 J-POWERによる高砂火力発電新設計画は、現在稼動している1,2号機が稼動以来50年近くになることから、これに代えて、新たに超々臨界圧(USU)型の石炭火力を2基(いずれも発電出力は60万kW)新設するもの。来年春の着工に向けて、環境アセスメントの手続きに入るための準備書の提出段階に入っていた。

 

 J-POWERは今年1月の時点で、環境影響評価方法書については、兵庫県を含めた関係自治体に届出ており、それを受けての住民向けの縦覧手続きも終えている。このため、今回の準備書提出の「当面延期」について、手続きの進行を中止したのか、あるいは事務的な調整なのかは現時点では不明。また26日現在、プレスリリース等での説明もない。

 

現在のJ-POWERの高砂発電所の夜景
現在のJ-POWERの高砂発電所の夜景

 

 しかし、KIKOは「『当面延期』の判断の詳しい理由は明らかにされなかったが、高砂市における計画が大幅に遅れる見通しとなったことを歓迎したい。計画に対する地元住民の反対や環境影響の懸念の声を真摯に受け止め、(延期よりも)計画を即刻中止とすることが求められる」との声明を発表している。

 

 地球温暖化対策を世界全体で推進しようというパリ協定が発効し、わが国も2030年に26.0%(2013年度比)の削減目標を掲げている。しかし、その一方で、電力小売市場の完全自由化を受けて、新規参入事業者や既存事業者などが石炭火力発電の増設を打ち出し、各地で住民の反対運動を引き起こしている。

 

 ただ、東京電力福島第一原発事故以来、企業、個人とも、省エネ意識が浸透しており、原発再稼動がなくとも、電力需要がもっとも高まる夏場でも、需給のバランスが崩れなくなっている。さらに、USU型の石炭火力は旧式のものに比べてCO2排出量は少ないとされるが、今回の石炭火力が計画通りに立ち上がると、年間720万㌧の温室効果ガスが排出される見通し。これは、高砂市の年間排出量240万㌧を3倍も上回る。明らかに温暖化対策に逆行する。

 

 石炭火力からは、健康被害を招く窒素酸化物、硫黄酸化物、PM2.5や水銀も排出する。発電所を新設すると、今後、数十年間にわたって、これらの汚染物質の排出を固定化することになり、地域の住民らは強く反発してきた。また、今年1月には、近くの兵庫県赤穂市で関西電力が保有する火力発電所の石炭への燃料転換計画が中止になったほか、3月には千葉県市原市でも石炭火力新設計画が中止になるなど、各地で既存計画の見直しの動きが広がっていることも影響した可能性がある。

 

http://www.kikonet.org/info/press-release/2017-04-25/jpower-takasago-postpone

http://www.jpower.co.jp/news_release/2015/01/news150122.html