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自然エネルギー財団、経産省が目指す「非化石価値取引市場」の設計で、自然エネと原発電力の区分等を要請。アップルやリコーなど企業10社も賛同(RIEF)

2017-04-26 22:55:55

hjikasekiキャプチャ

 

 公益財団法人・自然エネルギー財団は、経済産業省が今年度中に発足を目指している「非化石価値取引市場」が有効に機能するように、①消費者が自然エネルギー電力の使用を宣言できる②非化石電源を、自然エネルギーと原発電力を区分③自然エネでも太陽光、風力などの区分を明確化ーーの3項目を提案した。提案には、AppleやMicrosoftリコーなど環境保全に熱心な企業10社が賛同した。

 

 財団によると、経産省が導入しようとしている「非化石価値取引市場」は、エネルギー供給高度法に基づいて、小売電気事業者に非化石電源比率の調達義務(2030年度までに44%)の達成を求めるもので、自然エネルギー普及に力点が置かれているわけではない、と指摘している。

 

 このため、太陽光や風力などの自然エネルギー由来の非化石証書を購入した小売電気事業者が、どのような形で自然エネ電力を販売していると消費者に表示できるのか、あるいは自然エネ電力を購入した消費者が利用を宣言できるのかといった点が示されていない。

 

 こうしたことから、財団では非化石価値取引市場が、自然エネ電力の環境価値を明確に評価したうえで取引できるようにすべきとしている。財団は、同市場について「適切な設計がされると、企業が費用効率的に自然エネの活用を進めるうえで、重要な役割を果たし得る」と位置づけたうえで、制度設計への3点の要望をまとめた。

 

要望は次の通り。

  1. 電力消費者が自然エネルギー電力の利用を宣言できるようにすること
  2. 非化石電源の中で、自然エネルギー電力と原子力発電を区分すること
  3. 自然エネルギーの中でも、太陽光、風力、小規模水力、バイオマスなどの区分が明らかになるようにすること

 

 提案に賛同した企業は、Apple、富士通、イビデン、イケア・ジャパン、Microsoft、パタゴニア日本支社、リコー、清水建設、ソフトバンクグループ、ソニーの10社。

 

 非化石価値取引市場は、自然エネ発電などによる非化石電源の価値を売買できるようにすることで、再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)の国民の賦課金負担の軽減を図る狙いもある。ただ、売買される非化石価値の証書は、「再生可能エネルギー由来のもの(FIT含む)」もしくは「指定なし」の2種類からの選択とし、原子力由来の電力であることや、太陽光や風力などの種別は区分されない仕組みになっている。

 

 このため、「経産省は原発電源隠し」が狙いでは、との憶測が環境団体などにある。また、Appleなどのように、グローバルに企業活動に使う電力を再エネのみに限定しようとする企業にとっては、原子力の電源が混じっていると、電力市場から購入できない、といった問題も生じてしまう。

 

 今回の財団の提案に賛同した企業の中に、再エネ100%の実現を宣言する国際的なイニシアチブ「RE100」に署名しているApple、IKEA、Microsoft、リコーが入っているのは、そうした企業方針と、新市場が相容れなくなる可能性があるためだ。日本の非化石価値取引市場がグローバルな企業行動と連動しない「ガラパゴス化」する可能性もある。

 http://www.renewable-ei.org/images/pdf/20170422/REI_ProposalforPromotingRenewables_JP_170422_final.pdf