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日本原子力研究開発機構(JAEA)ら、東電福島第一原発の融けた核燃料デブリの除去方法を開発。レーザー照射とウォータージェットの組み合わせ(RIEF)

2017-05-01 14:39:07

JAEA1

 

   国立研究開発法人の日本原子力研究開発機構(JAEA)は、東京電力福島第1原発の廃炉作業で最難関とされる溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しのために、レーザー照射と高圧噴射水(ウオータージェット)を組み合わせててデブリを除去する新技術を開発したと発表した。

 

 新技術を開発したのは、JAEAと日立GEニュークリア・エナジー、スギノマシンの3者による共同研究グループ。福島原発では、圧力容器内の核燃料が溶融、崩落し、格納容器内でデブリとなって堆積しているとみられる。これらを取り除くには、放射性物質の放出を抑制しながら、遠隔操作で炉内の構造物と、流出したデブリ等を取り出し可能な大きさに切断して、回収する必要がある。

 

 考えられる方法としては、これまでレーザーを使って燃料デブリを切断する方法と、ウォータージェットによる切断の二種類が提案されてきた。レーザーの場合、レーザー光の照射で対象物を加熱溶融し、それをガスジェットで吹き飛ばして切断する。この場合、機械的な工法に比べて、対象物を固定する必要がなく、狭い炉内での作業に適しているという。ただ、加工時に大量のアシストガスが必要で、切断時に放射性ダストが飛び散ると言う課題がある。

 

 一方のウォータージェット切断では、ノズルから噴出する超高圧水をデブリに衝突させて切断するもの。水流なので対象物への熱影響が小さいという利点と、水が切断時に舞う粉じんを取り込むことから、放射性ダストの量を抑えることができる利点がある。ただ、加工能力を高めるためには、水だけではなく、研磨剤を混合させる必要があり、研磨剤が放射能汚染されることで、事後の汚染水処理が課題となる。

 

 JAEA2キャプチャ

 

 JAEAなどでは、これら二つの技術の強みを活かし、課題の部分を補うため、両方の技術を組み合わせることで、加工性の高い方法を見出したという。除去実験では、上部からレーザー光を照射すると同時に、斜め上からウォータージェットを噴出させることで、レーザーで切断された溶融部は、粉じんとなって飛散せず、ウォータージェットで開けられた穴の縁に堆積することが確認されたという。

 

 さらにウォータージェットについては、繰り返し断続的に噴射できるパルスウォータージェットを活用することで、研磨剤を混合しなくても溶融部分が切断できることがわかった。また除去方法についても、溶け出したデブリの厚さ等が不明なため、加工に伴う粉じん回収を最小限にする目的から、デブリの表面から連続的に削り取る「はつり」工法を試した。その結果、効率的に除去できることも確認されたという。加工時に出る除去物は、粉じんと合わせて別途、回収装置で回収する。

 

 原発事故時に運転中だった1~3号機では、いずれも溶融した核燃料が格納容器の底などにデブリとなってたまっているとみられる。東電はこれまで格納容器内にカメラ搭載ロボットなどを投入し調査してきたが、デブリの具体的な形や位置は分かっていない。しかし、東電は今夏にもデブリの取り出し方針を決めるとしている。

 

 最大の課題はデブリをどうやって取り出すのか、という点だが、今回のJAEAなどの開発で、除去の方法論の手応えは見えつつある。JAEA楢葉遠隔技術開発センターの大道博行センター長は「今後、2年間の研究で実用化を高める。デブリ取り出し技術に適用されることを目指して開発を進める」と述べているという。

 

 仮に格納容器内のデブリの位置を確認し、開発した方法で除去できた場合でも、取り出した放射性デブリを、どこでどう処理するのかという次の課題がある。またデブリは核燃料だけでなく、壊れた原子炉内部の構造物と混在していると思われ、材質の違う物質を今回の方法で対応できるかも課題である、さらには、今回の開発方法の有効性が確認された場合でも、操作は遠隔で実施しなければならない。その場合、高放射性物質の環境で遠隔操作が十分に働くかという点も課題として残っている。

https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p17042701/