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欧州で、再エネ電力側での蓄電機能を効率化するため、ブロックチェーン技術を活用する実証実験、5月からスタート。オランダ送電会社のTenneTなどが実施(RIEF)

2017-05-08 01:22:02

Tnnetキャプチャ

 

 オランダ・ドイツを拠点とする大手送電会社のTennetは、オランダの再生可能エネルギー事業者やドイツの太陽光蓄電池メーカーなどと共同で、フィンテックのブロックチェーン技術を活用して、再エネ電力を消費者側で蓄電するシステムの実証実験を5月末から行う。従来の電力会社中心の中央集権的電力網から、電力消費者の家庭を軸とした分散型電力網への転換を目指す。

 

 TenneTはオランダの国営送電会社だが、オランダだけでなく、隣国のドイツでも子会社を通じて、4大送電会社の一角を占めている。今回の実証実験は、家庭の太陽光発電電力を効率的に活用するシステムを構築することを目指す。オランダでの実験は蓄電設備として電気自動車を利用、ドイツでは家庭用蓄電池を採用して、再エネ電力を発電する家庭側での電力調節の実験をする。

 

 オランダでの実験は、再エネ事業者のVandebronが参加し、エコカーを保有する家庭を対象とし、エコカーの蓄電機能を利用する。一方のドイツでの実験では、家庭用蓄電会社のSonnen GmbHが、実験に参加するすでに太陽光発電設備を屋根に置いている6000軒の住宅に対して、新たに家庭用蓄電池を配布し、それを電力調整に活用する。

 

 電力網に、再生可能エネルギー発電による電力を直接接続すると、再エネ発電の電圧変動等の影響が電力網側に生じやすくなる。そこでTenneTでは、エコカー、家庭用蓄電池活用の両方のケースで、フィンテックの主要技術の一つであるブロックチェーン技術をIBMから導入し、広域デジタル伝送プログラムを構築する。

 

 ブロックチェーン技術のHyperledger Fabricを使うことで、各電力の登録と証明書発行、権限設定等を行って電力データを暗号化し、安定的な電力の流れを確保することを目指すという。TenneTの CEOである Mel Kroon氏は「今回の実験は、再エネ電力の増大に対応した電力網を広域的に整備することを目指している」と説明している。

 

ドイツとオランダをカバーするTnneTの電力網
ドイツとオランダをカバーするTnneTの電力網

 

 ドイツには1500万戸の戸建て住宅があり、このうち、現在すでに、1割以上の170万戸が屋根に太陽光発電を設置している。ただ、発電した電力を安定的に供給できる家庭用蓄電設備を整備している住宅は5万戸しかない。今回のブロックチェーン技術を加味した蓄電実験は、より安定した電力を電力網に自動供給することに貢献するとみられている。


 もし、今後10年間に、戸建て住宅の1割が蓄電池付の太陽光発電設備を設けると、約6GWの発電が可能となる。この発電力は原発6基分に相当する。TennetとSonnenはまず、今回の実験では、24MWの風力発電の電力をプール(蓄電)して活用することを目指す。利用するIBMのブロックチェーン技術はコスト的にも十分対応可能なものとされる。

 

 再エネ電力を既存の電力網に接続する際、一定量以上の電力になると、電力網側の安定性が揺らぐ懸念が各国で指摘されてきた。日本でも固定価格買い取り制度(FIT)導入を受けて急増した太陽光電力の接続を九州電力が一時留保するなどの騒ぎを起こしたことがある。

 

 今回の実験が成功すると、電力網の再エネ・リスクが急減し、電力システムの安定性が高まる。さらに太陽光、風力等の再エネ発電のリスクが軽減し、普及が一段と進む可能性がある。日本でも、再エネ電力を効率的に蓄電化するシステムとして、ブロックチェーン技術の活用が期待される。

http://www.tennet.eu/news/detail/tennet-unlocks-distributed-flexibility-via-blockchain/