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ドイツでの国連気候変動会議、米代表が途上国支援の「緑の気候基金(GCF)」への30億㌦の拠出停止を公式に言明。パリ協定離脱には触れず(RIEF)

2017-05-15 22:32:16

Bonキャプチャ

 

 米国の気候変動対応の後退が公式に打ち出された。気候変動問題担当副代表のTalley氏は、ドイツのボンで開いている国連気候変動会議(APA1-3・SB46)の場で、途上国の温暖化対策支援のために設立した「緑の気候基金(Green Climate Fund:GCF)」に、米国は新規資金を拠出しない旨、公式に表明した。

 

 国連気候変動ボン会議は、パリ協定のルール作りのため、今月8日から開かれている。GCFは2010年開催のCOP16で設立が決定され、11年のCOP17で国連の委託機関として指定された。本部は韓国仁川市ソンドで、昨年12月7日時点で、日本を含む43カ国及び都市・地域等が拠出を表明し、約103億㌦の資金を確保している。日本は15億㌦の拠出を決定している。

 

 米国の拠出額は最大の30億㌦の予定で、昨年11月にオーストラリアのブリスベンで開いたG20首脳会議時に、オバマ前大統領と安部首相による日米首脳会議では、日米で45億㌦の拠出を合意している。http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000059839.pdf

 

 GCFキャプチャ

 

 しかし、トランプ大統領は大統領選挙中から、GCFへの拠出を停止する考えを打ち出していた。大統領就任後も国内では、何度もGDFへの拠出に否定的な姿勢を示してきた。このため、米国内では今回のTalley氏の発言は当然視されているが、国連の気候変動会議の場で、米国代表の公式意見として表明されたのは初めて。各国の交渉担当者の間では、米国がパリ協定から離脱することを前提にした対応ではないかと、悲観的な見方が高まっている。

 

 Talley氏の発言は、各国交渉官との交渉の場で、インドの代表がGCFの資金に対する米国の姿勢を確認したことに対しての回答の形で示された。「われわれは今年、GCFに拠出する準備はしていない。少なくともそうしない計画だ。トランプ政権の姿勢は明確だ」と言明した。

 

 先週末の会合では、米国がオバマ前政権時代に、2020年までに温室効果ガス排出量を17%削減する(2005年比)と約束したことへの質問も相次いだ。この約束はパリ協定での米国の公約よりも緩いが、Talley氏は、トランプ政権は2020年目標の約束についても維持するかどうか、まだ決めていないと説明した。

 

 またブラジル代表が、米国は排出量削減のために市場メカニズムを活用するのかと質問したことに対しても、「全く現時点では計画していない」と否定してみせた。ただ、EU代表が、米国経済はCO2排出量が低下し続けているにも関わらず成長を続けているではないか(温暖化対策は成長を阻害しない、との意味)と迫ると、返答を避けた。

 

 また、各国代表が関心を寄せるパリ協定からの離脱の有無についても、「政権はまだ国内、国際両面の気候変動に関する公式の政策をまとめきっていない」として、コメントを控えた。

 

 会議に参加した環境NGOらからは、「トランプ政権が公式にパリ協定からの離脱を言明してもしなくても、米政権は他の世界中の国々とは異なる方向に動いていることは明瞭だ」(Christian Aidの Mohamed Adow氏)などと、米国の不誠実な姿勢に対する批判の声が相次いだ。

http://www.greenclimate.fund/home