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国際物流・郵便の世界大手ドイツポスト 配送車両をEVに全面切り替えへ。2021年メド。2050年には配送事業でのCO2排出ゼロを目標(各紙)

2017-05-23 12:03:36

Germanpostキャプチャ

 

  各紙の報道によると、国際物流・郵便の世界大手、ドイツポストは2021年をめどに保有する約4万7000台の小包配送車のほぼすべてを電気自動車(EV)に切り替える。自社のEV生産能力を現在の3倍の年間3万台に高める。さらに2050年には、すべての配送関連のCO2排出量をゼロにする目標を公表した。

 

  配送者のEV化は、日本経済新聞がドイツポストで同事業を担当するユアゲン・ゲルデス取締役への取材として報じた。EV化の加速によって、二酸化炭素(CO2)排出量を減らせるほか、部品交換などの車両維持費もディーゼル車より抑えられる。

 

 各国の宅配事業者は、ネット通販の普及による宅配量の増加や配送中のCO2排出増が世界共通の課題となっている。ドイツポストは自らEV生産体制を整えており、世界の大手配送会社として初めて小包配送車の全EV化を打ち出した。日本ではセブン―イレブン・ジャパンが年内にも首都圏で店舗への商品配送に電動トラックを導入する動きがあるが、物流用途へのEV導入はドイツに大きく遅れている。

 

 独市場でドイツポストのライバルでもある宅配大手のヘルメスも2018年から順次EV化に乗り出すという。ドイツは自動車大国で、宅配EV化の加速は、国内のEV普及にも効果がある。またEU域内の他の国にも波及の可能性がある。

 

 ドイツポストは独国内の小包配送で約5割のシェアを持つ。すでに保有車両の2500台を自社で開発・生産するEVに切り替えた。さらに年内には5000台まで増やし、今後4~5年のうちに山岳地帯向けなど特殊用途を除いて原則EVにする計画だ。

 

Germanpost2キャプチャ

 

 同社は、2014年にEVベンチャーのストリートスクーターを買収、独西部アーヘンの工場では年1万台の生産能力を持っている。この能力を年内に2倍に引き上げるとともに、第2工場も作って、EV生産力を同3万台に増やす。現在、生産しているEVは荷物の積載容量が4㎥と8㎥の2車種のみだが、来年からは20㎥の大型車の生産も始める。ただ、EV車は現在のところ、1回の充電で80kmしか走行できないほか、最高速度も時速80kmまで。しかし、地域が限られている宅配用途では実用に十分と判断した。

 

 同社のEVは破損しても補修しやすい設計にしており、部品の交換費を既存ディーゼル車の3分の1程度で済むという。ディーゼル車に比べ、初期投資費は高くなるが、燃料費や部品等の維持費を含めて比較すると「費用は既存車両と同等」(ゲルデス取締役)。宅配車両は停止や再始動が多く、EV車の年間CO2削減効果は1台あたり3㌧になる。

 

 同社は自社開発のEVを、社外にも販売する。政府などがEV購入を支援する補助金などを活用すれば、1台あたり2万8000ユーロ(約340万円)で購入できる。欧州に続き、アジアでの現地生産・販売も検討しているといい、「20年に10万台を目指したい」(ゲルテス取締役)。大赤字に転落した日本郵便会社を抱える日本郵政も、名誉挽回で導入を検討してはどうか。

 

 ドイツポストは、今回のEV化を、2050年のゼロエミッション化に向けた中間目標の一つにあげている。2025年までに達成する中間目標として、①自社及び他社の引き受け荷物の輸送からのCO2排出量を50%削減(2007年比)②消費者向けの配送事業でのEV、あるいは電動バイクの使用を全体の70%に引き上げ③売り上げの50%以上をグリーン化④グリーン化促進のため従業員の80%をグリーンの専門家としてトレーニングするーーを明示している。

http://www.dpdhl.com/en/media_relations/press_releases/2017/dpdhl_group_zero_emissions_logistics_2050.html