HOME8.温暖化・気候変動 |「電気自動車の実用化が『見えて』きた」ー生産コストが急低下。最新車のコストは来年にも従来車と同水準に。販売面でも2023年に転換点へ。UBS専門チームが分析(RIEF)。 |

「電気自動車の実用化が『見えて』きた」ー生産コストが急低下。最新車のコストは来年にも従来車と同水準に。販売面でも2023年に転換点へ。UBS専門チームが分析(RIEF)。

2017-05-29 00:00:39

eon1キャプチャ

 

  電気自動車の価格下落が急速に進展している。スイスの投資銀行UBSの分析によると、GMが韓国のLGグループと共同開発したシボレー・ボルト(Chevy Bolt)の生産コストは、早ければ来年中にも従来のガソリン自動車等とほぼ同レベルになり、2023年には利益を考慮した販売ベースでも同レベルを実現できるという。2025年には世界の自動車販売の15%を電気自動車が占めるとも推計している。

 

 UBSの分析通りのコスト・価格レベルが実現すると、電気自動車はCO2排出量ゼロという環境面での絶対的な優位性があるので、自動車販売市場で、既存のガソリン車より十分に有利になる。UBSは、電気自動車の実用化は、自動車の大量生産を実現した1908年発売のフォードのモデルT(T型フォード)の登場と同様の大転換につながる、と予測している。

 

 UBSの「evidence lab」であるUBS Neoが分析した。分析は最新の小型電気自動車であるシボレーボルトを解体し、その経済性を徹底的に調べた。ボルトは、航続距離は一回の充電で米基準で約238マイル(383km)、欧州ではオペルのオペル・アンペラ-eのブランドによる欧州基準で約500kmを達成できる。

 

分析対象としたGMのシボレーボルト
分析対象としたGMのシボレーボルト

 

 UBSが部品ごとに検証したところ、ボルトの2017年車の生産コストは37000㌦で、当初想定されていたよりも4600㌦安くなっていた。さらに「もっとコスト削減余地がある」と指摘している。

 

 また現時点では、GMは大量生産のコストダウン効果を見込めないので、同規模のガソリン車の販売価格と比べると、GMはボルトの生産1台当たりEBIT(支払金利前税引前利益)で7400㌦の損失を出す、としている。

 

 同様にテスラの小型電気自動車のModel 3の場合、2800㌦の損失見込みとなる。ただ、テスラは平均販売価格を41000㌦とすることで、収支イーブンにできるとしている。

 

 UBSはこうした損失コストは、従来考えられていたよりもはるかに低く、潜在的な価格下落余地は非常に大きい、とみている。そして、消費者の購入価格は、まず欧州市場で、ガソリン車の燃焼エンジンとほぼ同レベルに達すると結論づけている。

 

 今後の更なる技術進歩と市場化による大量生産効果で、2023年までには、自動車メーカーは販売に際して、ガソリン車と同様に5%の利益を確保できるようになる、とみている。その結果、早ければ2025年までに、世界の自動車販売の14%を電気自動車が占めるとも推計している。

 

 電気自動車は、ガソリン車に比べて圧倒的に部品が少なく、耐用性も優れている。このため、自動車販売の主流が電気自動車に移行することで、部品メーカーや修理工場なども大きな転換を求められるという。仮に自動車が100%電気自動車化すると、部品産業の60%に縮小する可能性もあるとしている。

 

 今回のUBSの推計は、自動車専門家らにも大きな衝撃を与えている。英国のAston大学の自動車専門家として知られる David Bailey教授は「この分析結果が事実とすると、自動車産業はこれまで多くの人が予想したよりもはるかに早く、転換点を迎えることを意味している」と、電気自動車のコストダウンの早さを重視している。

 

 また、国際コンサルの専門機関である IHS Markitの自動車分析専門家のIan Fletcher氏も「ディーゼル車やガソリン車がすぐに不用になるとは思わないが、自動車メーカーはCO2排出量への課税なども考慮すると、従来の燃焼エンジンへの投資コストは重く感じるだろう」とみている。

 

 UBSが分析の対象とした電気自動車は、ハイブリッド車などではなく、バッテリーだけで駆動する完全な電気自動車。グローバルな自動車販売市場での競争は、電気自動車の性能、価格、デザイン等を中心とした競争に一変することになりそうだ。

http://about-neo.ubs.com/content/onetouchoneworld