トランプ米大統領 パリ協定からの米国の離脱を公式に宣言。協定の再交渉・新協定にも言及。欧州各首脳は再交渉を否定（RIEF）
2017-06-02 12:13:46
トランプ米大統領は1日、地球温暖化対策の国際合意である「パリ協定」からの米国の離脱を公式に表明した。大統領は離脱理由として、「パリ協定は非常に不公平だ」「米国に不利益をもたらし、他国の利益となる」などをあげた。協定に参加しない国は、米国とシリア、ニカラグアの3カ国となる。
トランプ氏は離脱を明言すると同時に、「米国が公正に扱われる条件の元で、協定に再加盟するか、あるいはまったく新しい交渉（新協定）を行うかの再交渉を始めたい」と提案した。ただ、新協定についての具体的な条件には触れなかった。http://rief-jp.org/ct4/70344
米国の協定離脱の正式表明を受けて、ドイツのメルケル首相、フランスのマクロン大統領、イタリアのジェンティローニ首相は同日、連名による声明を発表、「パリ協定は再交渉できない」として、トランプ大統領の提案を拒んだ。協定には米国以外に194カ国が署名している。欧州諸国は2日からブリュッセルで開くEUと中国との首脳会議で、米国抜きでのパリ協定順守を確認し、EU中による温暖化対策での協力強化を宣言する見通しだ。http://rief-jp.org/ct4/70359
トランプ大統領は協定離脱とともに、オバマ前大統領が約束した（温暖化ガス削減の）米国の国別目標の履行（2025年までに05年比で26～28％削減）や、国連の「緑の気候基金（Green Climate Fund）」への米国の資金拠出（30億㌦）の中止等についても明言した。
トランプ氏はパリ協定から離脱し、新協定を提案擦る理由として、米国民の税金が海外に流れていると指摘した。「もう他国の笑いものになりたくはない」と述べ、主要排出国の中国やインドは恩恵を受けてきたと批判の矛先を新興国・途上国に向けた。
また「私は（炭鉱業で栄えた）ピッツバーグの市民を代表して当選した。パリではない」と述べ、協定順守で温暖化対策を推進するより、石炭産業を維持して炭鉱労働者の雇用を重視する考えを強調した。これに対しては、ピッツバーグ市のペドュート市長がツィッターで「（私は）パリ協定に従う」と投稿し、トランプ氏と異なる姿勢を示した。
パリ協定の規定では、署名国の離脱が可能になるのは発効から４年後の20年11月となる。ただ、協定の元となる国連の気候変動枠組み条約（UNFCCC）から離脱すれば、即座に脱退は可能となる。ただ、トランプ氏は「協定の再交渉」に言及していることから、当面は、各国との交渉を継続し、不調に終われば、4年後に離脱するか、UNFCCCそのものから離脱するかの選択をするとみられる。
ただ、当面は協定に残って交渉を継続するとしても、米国が約束した温暖化目標実現のための対策や、GCFへの拠出などは実行しないとみられることから、グローバルな温暖化対策が行き詰まりをみせるのは避けられないとみられる。
パリ協定の以前の京都議定書では、温暖化ガスの削減目標は先進国だけが定めた。これに対して、パリ協定は、成長とともに温暖化ガス排出量が増加している新興国・途上国も、自主的に国別削減目標を掲げ、195カ国（米国を含む）の署名で実現した。
こうした中で、世界２位の温暖化ガス排出国であり、途上国向けの資金拠出でも最も期待されている米国が離脱すれば、途上国等が削減目標を実行しない可能性も出てくる。実際には、協定による各国の公約通りに排出削減が実現できても、協定が前提とする「2℃目標」の実現には十分でない、こともわかっており、温暖化を歯止めをかける国際的な機運を、米国が損なうことは間違いない。
オバマ前大統領はトランプ大統領の協定離脱声明を受けて声明を発表した。「米国は将来を否定する極めて少数の国になってしまった。しかし、米国の各州や都市、自治体、さらにビジネス界はこれまで以上に温暖化対策を推進し続けるだろう」と述べた。
GEの会長兼CEOのジェフ・イメルト氏は「気候変動は現実だ。産業界は、温暖化対策をリードしなければならない」と強調した。Appleや Google、ウォルマート、さらにエネルギー企業の ExxonMobil、 BP、 Shellなど数百を超える大企業も、パリ協定を支援する立場を公言している。
Research Institute for Environmental Finance