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石油メジャー最大手ExxonMobilの株主総会。気候関連情報の開示求める株主決議、賛成多数で可決。米国のパリ協定離脱とは別に、投資家の気候リスク懸念は変わらず(RIEF)

2017-06-03 02:32:26

Exxonキャプチャ

 

  石油メジャーの最大手、ExxonMobilが今週開いた株主総会で、気候変動による長期の保有資産への影響と技術進歩についての年次評価の報告を求めた株主決議が62.3%の賛成多数で可決した。機関投資家の提案によるもので、金融安定理事会(FSB)が進める気候変動リスクの情報開示を先取りした形だ。

 

 情報開示を求める株主決議を提案したのは、英国国教会代表者のEdward Mason氏と米ニューヨーク州監察官のThomas DiNapoli氏。昨年の株主総会でも同様の提案をしたが、その際は賛成票は38%にとどまった。今回はCalPERS(カリフォルニア州職員退職年金基金)をはじめ、Exxonに投資している多くの年金基金等が賛同し、多数を超えた。

 

 今回の決議に対して、取締役会は内容を採択する義務はない。しかし、経営陣が対応しないと、株主決議を無視する形となり、機関投資家側が投資資金を引き揚げる等の行動に出る可能性もある。今後のExxon経営陣の判断が注目されている。

 

 提案者となったニューヨーク州監察官のDiNapoli氏は「低炭素経済への円滑な移行を確実にすることを求めている投資家にとって、素晴らしい勝利となった。ボールはExxon経営陣に渡された。気候変動を深刻に受け止める株主の関心にどう対応するかだ」と指摘している。

 

 Exxonの株主総会は、トランプ米大統領がパリ協定からの米国の離脱を宣言する前日に開かれた。トランプ大統領の離脱決意の情報が事前に市場に流れる中での株主総会となった。しかし機関投資家たちは、米国の政治判断の如何に関わらず、投資判断として主要投資先企業が抱える気候変動による企業価値への影響の明確化を求めた形だ。

 

 すでに、ShellやBP、Total、Statoil、Eniなどの欧州系の大手エネルギー企業は、気候変動情報の開示を始めている。ShellとBPはともに2015年の株主総会で99%の株主の賛同で情報開示決議を可決している。今年初めには同じ米系メジャーのChevronも株主要請を受ける形で、投資家向けに気候変動リスクへの同社の対応を評価した報告書を公表した。

 

 

 Exxonの株主決議や他のエネルギー企業の情報開示は、FSBが7月のG20(20カ国蔵相中央銀行総裁会議)で報告を予定している気候関連財務情報作業部会(TCFD)の勧告内容を先取りした形でもある。環境NGOのCarbon Tracker InitiativeのRobert Schuwerk氏は「気候変動要因は、今や、投資家の投資先企業に対するエンゲージメント活動の中心課題になっている」と評価している。

 

 株主決議のもう一人の提案者である英国教会のEdward Mason氏は「今後、われわれはExxonに対して、他の同業企業と同様の情報開示を株主のために早急に取り組むよう求めていく」と、開示情報の中身の精査にも目を光らせる姿勢を示している。

 

 国連の責任投資原則(PRI)事務局長のFiona Reynolds氏も決議を歓迎している。「Exxonの投資家は今回の決議を採択したことで、その主張を明確にできた。多くの投資家が気候変動に関する重要なリスクに直面するようになっており、投資先企業に対する情報開示要請を求める行動は今後、ますます強まっていくだろう」と評価している。

 

 気候変動NGOのShareAction代表のCatherine Howarth氏は、Exxon株主の行動を高く評価する一方で、先行したShell やBPでは情報開示はされているが、両社の経営戦略は、2℃シナリオではなく、3℃シナリオに留まっている点を指摘。「石油メジャーを低炭素シナリオに移行させるうえでの最初の一歩でしかない」と、継続的な働きかけの必要性を強調している。