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トランプ大統領、不法移民排除のための「メキシコ国境の壁」に太陽光パネル建設を検討。温暖化対策の「いいとこどり」を目指す(各紙)

2017-06-09 10:17:05

trumpキャプチャ

 

 各紙の報道によると、トランプ米大統領は、選挙期間以来、主張しているメキシコとの国境沿いに建築する壁(フェンス)に、太陽光パネルを設置するという案を6日、共和党の首脳らとの会合で示唆したという。

 

 ウェブメディアの「Axios」と「Politico」が報じた。主要な米メディアもフォローした。それによると、トランプ大統領は、与党・共和党のライアン下院議長やマッカーシー院内総務らとホワイトハウスで会談した際、大統領が執念を燃やすメキシコ国境との間の壁の建設に際して、「壁を太陽光パネルで建築してもいいのでは」と語ったという。

 

 これまで、トランプ大統領は、メキシコからの不法移民の入国を阻止するための壁の建設費をメキシコ側に負担させると主張していた。これに対して、メキシコ側は強く反発、その後も公約の実現はほとんど進展していない。

 

 建設費を捻出できないと壁の建設はできない。連邦議会は与党・共和党が上下両院で多数を占めているものの、与党内でも壁の建設への疑念が強く、建設費は予算化されていない。そこで、大統領の提案は、太陽光パネルを設置し、売電による収益で建設費を賄うという案も検討対象だと示唆した。

 

 米政府筋によると、米国土安全保障省(DHS)には、今春の時点で少なくとも2社が太陽光パネルを含む国境の壁を提案していたという。トランプ大統領はこうした案を採用したい考えのようだ。

 

 しかし、ここで矛盾が生じる。トランプ大統領は温暖化対策のパリ協定からの離脱を宣言しており、再生可能エネルギーの太陽光発電よりも、石炭などの化石燃料主体のエネルギー政策への回帰を目指している。温暖化対策を否定しながら、太陽光発電の売電収入をあてこむという政策は、「いいとこどり」ということになり、非現実的との批判を受けかねない。

 

 米国とメキシコとの国境の総延長は約3200kmある。仮にパネルを1枚ずつ並べると、国境すべてをカバーするには200万枚、約500MW相当の太陽光パネルが必要になる。メキシコとの国境沿いの州選出の共和党議員の多くからは「国境沿いのすべてに壁を建設するのは現実的でない」とし、要所を絞って壁やフェンスを設置するのが妥当と指摘している。

 

 民主党は、一般に環境規制には賛成する傾向が強いが、大統領が色気を示す「国境を遮る太陽光の壁」建設に対しては、「温暖化対策ではない」として反対するとみられる。