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2040年までの世界の電力総投資額10兆2000億㌦のうち、7割強は再生可能エネルギー投資。年間4000億㌦市場が継続。ブルームバーグNEFが報告書で推計(RIEF)

2017-06-22 01:16:05

Bloomberg2キャプチャ

 

 Bloomberg NEF(BNEF)は、2040年までに世界中で10兆2000億㌦の新たな電力投資が発生、そのうち72%に相当する7兆2000億㌦が再生可能エネルギーに投じられるとの推計を公表した。毎年の再エネ投資額は4000億㌦規模で、年間伸び率は平均2-3%増。2040年には世界における太陽光発電と風力発電の設備容量は現在の12%から48%に、発電量に占める割合は5%から34%に拡大するとしている。

 

 BNEFはグローバルな電力需要は毎年2%平均で増加し、2040年までに現状よりも58%増えるとみている。経済成長と電力需要の関連はデカップル(分離)化が進み、GDP単位当たりの電力消費量は2016-2040年の間に27%減少すると見込んでいる。省エネの進展が大きい。

 

 再エネ発電の増加7兆2000億㌦のうち太陽光発電は2兆8000億㌦、風力発電は3兆3000億㌦で、投資額の増加は風力が毎年3.4%、太陽光2.3%で、太陽光は市場の飽和感が出て、風力投資が主流になっていくとみている。

 

 国別にみると、ドイツは発電に占める再エネ比率が74%に上昇、中国55%、インド49%、米国38%などと軒並みウエイトを高める。これは再エネ設備の価格低下に加えて、蓄電技術の発展で、自然エネルギーの弱点である発電量の不安定さが解消されることが大きい。

 

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   発電価格の低下は太陽光の場合、2040年までに現状より、平均で66%下落が見込まれる。これは1ドルで購入できる太陽光電力が現状より2.3倍も増えることと同じだ。陸上風力の場合も、同様に47%の発電価格の下落が見込まれる。洋上風力の場合、スケールメリットや技術開発効果が反映しやすいことから、さらに価格下落が進み、平均下落率は71%と見込んでいる。

 

 家庭の屋根等に設置する消費者主導の太陽光発電 は、40年までにオーストラリアでは全電力の24%を占め、ブラジルでは20%、ドイツで15%、日本でも12%を占めると推計している。

 

 電気自動車は電力生産増と電力網の効率化に貢献する。電気自動車による電力は、欧州では40年までに電力生産の15%を占め、米国では12%を占める。太陽光や風力などの再エネ電力が余剰となり卸価格が低下する際は、電気自動車に余剰分をチャージすることで、電力の安定供給に貢献できる。

 

 また電気自動車の増加はリチウム・イオン電池のコスト低下をも促進する。30年までに現状より73%削減が見込まれる。 40年までにリチウム・イオン電池の市場は、現行の10倍の年間200億㌦市場に成長する。このうち家庭向けやビジネス向けの小規模蓄電池が、40年時点で世界市場の57%を占める見込みだ。

 

 いくつかの国では30年までに、太陽光などの再エネ電力の操業コストは、石炭火力発電を下回り始める。再エネの普及と石炭火力発電の減少が効果をあげてくる。また現在、計画されている石炭火力発電のうち実際に稼働できるのはわずか35%に限られる見込みだ。これは発電量にして369GW分のプロジェクトがキャンセルされることを意味する。

 

 こうした新規計画の見直し等によって、石炭火力発電による発電量は2026年がピークで、以後は低下する。地域的にはアジアではまだ石炭火力への需要は続くが、欧州や米国、中国などでは今後10年以内に、需要が急減するため、全体でみると、アジアの増加分を相殺する。

 

 天然ガスは化石燃料の中でも移行期のエネルギーとして継続される。しかし、その役割はそれほどでもない。ガス火力発電は40年までに現行より16%増加するが、長く「ベースロード電源」とされてきた石炭火力の代替役というよりも、電力需要のピーク時やシステム全体を安定させるための柔軟な電源としての役割になるだろう、とみている。ただ、シェールガス開発が進む北米では、ガス価格の低下から、ガス火力は当面、より中心的な役割を果たすとみている。

 

 アジアでのエネルギー投資は、他の地域全体を合わせたよりも、引き続き多くの資金を惹きつける。中国とインドだけで、4兆8000億㌦の投資機会が生まれる。2017-40年のアジア地域でのエネルギー投資の28%は中国で、11%はインドに投じられる。アジア向け投資の配分は、太陽光と、風力に3分の1ずつ、残りは18%が原子力、10%が石炭とガスになる。

 

  アジアにおいても石炭使用のピークはすでに見えている。2024年ころから石炭の頭打ちが生じ始め、既存設備の廃止が新規発電分を上回る形で、石炭発電量も2028年にピークを迎える。2020年代の半ばまでに、風力、太陽光発電の平均価格が新規石炭火力を下回り、石炭火力は年間平均9GWの減少に向かう。

 

 しかし既存の発電所が残るほか、地域によって石炭火力依存が続くところもあることから、40年時点で石炭火力の発電量は全体の34%と3分の1の比率で残る。

 

 中国の石炭使用は2026年にピークをつけ、再エネ発電の使用量は40年には現在の8倍に増加する。ただ石炭火力はピークを付ける2026年時点で現状よりも20%増となっている。40年時点でも発電量全体の30%を占め、現状と同様、世界最大の温室効果ガス排出国であることに変わりはない。

 

 日本と韓国は、石炭からガスへの転換が進んでおり、太陽光は三番手の位置づけだ。ただ、今後10年をみると両国ともガス発電は伸び悩み、新規の石炭火力が今後の10年間で30GWを超える見込みだ。石炭火力が増加するのはOECD諸国では日本と韓国だけになる。

 

 欧州の再エネ投資は40年までに毎年2.6%、400億㌦の伸びを続ける。17-40年の再エネ総投資額は1兆㌦を上回る。電力供給の半分は再エネ発電で占められ、電力網の改善により、103GWの新規送配電能力が高まり、そのうち53GW分は蓄電設備の導入による。

 

 欧州の天然ガス発電は、石炭火力と原発の退潮で優位に立つが、それでもガス発電の消費は2008年のピーク時を上回ることはないだろう。前述のように、ガスはベースロード電源の代役ではなく、過不足調節の柔軟電源として機能するためだ。

 

 原発の発電は40年までに50%減少する。需要の減退と同時に、再エネ発電の低下、ガス発電への転換等が原発の経済性を低下させるためだ。これらのエネルギー転換で欧州の温室効果ガスの排出量は40年までの間に73%減少する。

 

 米国での40年までの再エネ投資は年間500億㌦平均となり、総額1兆5000億㌦が見込まれる。太陽光への投資は年間1.5%増で伸び、風力の0.8%増を上回るペースとなる。トランプ大統領は石炭産業擁護を打ち出しているが、米国でも石炭火力は45%低下し、発電コストがより安い再エネやガスに転換していく。

 

 BNEFは、こうした電源の変化を受けて、米国の電力産業からの温室効果ガス排出量は2030年には2005年比で30%低下するとみている。トランプ大統領はパリ協定からの離脱を宣言したが、仮にオバマ前大統領が提唱した連邦レベルの「クリーン・パワー・プラン(CPP)」の規制がなくても、 同計画で想定していた電力部門からの排出削減量32%とほぼ同レベルの削減が、今後、見込めることになる。

 

 そうなると、パリ協定での米国の公約である、2025年までに26-28%削減(05年比)を実質敵に達成できる可能性もあるとしている。

 

https://about.bnef.com/blog/global-wind-solar-costs-fall-even-faster-coal-fades-even-china-india/