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主要欧米企業、米国市場へのカーボン税導入を提言。米紙に全面広告。トン当たり40㌦の税率で段階的引き上げ。税収は個人に還元。4人家族で年間2000㌦の「カーボン配当」(RIEF)

2017-06-22 23:00:58

CLCキャプチャ

 

 ゼネラル・モーターズ(GM)やエクソンモービルなど欧米主要企業で構成するClimate Leadership Coucil(CLC)は、20日付米紙ウォール・ストリート・ジャーナルで、米国内でのエネルギー開発などでのCO2排出量に課税するカーボン税を提案した。当初の税額はトン当たり40㌦とし、次第に引き上げる。税収は個人に「配当」として還元するという。

 

 広告に名を連ねたのは11社。GM、エクソン、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、ペプシコ、外資系のロイヤル・ダッチ・シェル、仏トタル、英BP、ユニリーバ、仏シュナイダーエレクトリック、スペインのサンタンデール。

 

 気候変動に関しては、トランプ大統領がパリ協定からの離脱を宣言したことで、米国内では再生可能エネルギーを重視する温暖化対策派と、石炭擁護などの温暖化懐疑派に、議論が二分されている。CLCはこうした状況を解決するため「気候問題の合意(Consensus Climate Solution)」を目指して提言した。

 

 提言は4点からなる。①段階的に引き上げる税収中立型のカーボン税を導入する②カーボン税の税収はすべてのアメリカ人へ温暖化対策の「配当」として配分する③同税の導入によって多様な温暖化規制を撤廃する④各国との競争条件を一致させるための国境調整と米国の競争力の促進策をとる。

 

 CLCはこれらの提言を「カーボン配当政策(Carbon Dividend Solution)」と名づけ、環境重視、成長重視、雇用重視、競争力重視、ビジネス重視、国家安全保障重視の政策だと強調している。

 

 この「カーボン配当政策」の仕組みをもう少し説明しよう、段階的なカーボン税は、エネルギー開発の鉱山や油井、輸入燃料の場合は港湾等の精製段階や市場化される段階で課税する。当初の課税額は㌧当たり40㌦を見込んでいる。

 

 税収は全アメリカ人に「配当」として還元される。個人への銀行振り込みや小切手、年金口座等へ直接入金される仕組みだ。たとえば平均的な4人家族だと、税導入の最初の年に年間2000㌦の配当を得る。税額が引き上げられて気候変動対策が強められれば強められるほど、個人が得る配当は増える計算だ。税金還元は社会保障局が担当するとしている。

 

 ただ、米国のエネルギー企業などに課税することから、他の国が同様の課税なり温暖化対策をとらない場合は、米国企業の競争力に影響する。そこで、米企業の競争力維持と、他国が米国の政策に「ただ乗り」しないよう、国境調節措置を導入する。

 

 同措置は米国の輸出先国が同等の温暖化対策をとっていない場合、米国の輸出企業は納税したカーボン税をリーベートとして還付され、対等の競争力を回復する。対策をとっていない国からの米国への輸入品に対しては、米国企業のカーボン税に相当する課徴金を課税する。

 

 また同税の導入によって、これまで環境保護庁(EPA)が導入してきた多様な温暖化対策規制の多くは不要になリ、規制緩和が進むとしている。不要になる規制にはオバマ前大統領が導入した石炭火力発電所規制の「クリーンパワープラン(CPP)」も含まれる。

 

https://www.clcouncil.org/wp-content/uploads/2017/06/Climate_Leadership_Council_WSJ_Ad.pdf

 

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