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東京電力、5月策定の新経営計画「実現できない」。退任の数土会長が株主総会で明言。税金による支援を当て込んだ経営継続へ(各紙)

2017-06-25 17:52:32

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 各紙の報道によると、東京電力ホールディングス(HD)が23日に、東京都内で開いた株主総会の場で、議長を務めた数土(すど)文夫会長が、5月に決めたばかりの東電の新経営計画の実現可能性について「(実現)できない」と明言した。事故処理費用22兆円の政府試算を踏まえ、ある意味で「正直に」に経営での対応不可能を認めた形だ。税金による政府支援を前提とした東電の経営のあり方が改めて問われる。

 

写真は、東京電力ホールディングスの川村隆・新会長(左)と小早川智明・新社長)

 

 数土氏は、総会後の会長退任が決まっていたことから、本音を漏らした格好でもあった。経営トップが実現不可能と認識する経営計画を立て、株主総会で説明するというのも欧米企業では考えられない“異常”な状況だ。株主からは「実現可能な経営方針を示してほしい」と批判の声があがったが、総会は「できない計画」を含めて承認して終わった。

 

 総会では、広瀬直己社長が福島第一原発の事故処理費用を約22兆円に修正した昨年末の政府試算を報告した。東電と政府はこの試算に沿って処理費用等を捻出するため、5月に新経営計画をまとめたことを説明した。ただ、同計画に盛り込まれている柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働などの措置は、実現のメドがなく、株主から「信用できない」と疑問視する意見があがった。

 

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 こうした株主の疑問を受ける形で、議長の数土氏が、「22兆円という数字は驚天動地、未曽有の数字で(捻出)できない」と明言し、「これからの経営陣は、それを百も承知で挑戦しなければならない」と答えた。株主の側こそ「驚天動地」だ。

 

 ある株主からは、計画を実現できなければ、さらに国民の負担は膨らみ、東電の経営継続の是非にも改めて疑問が生じる、との指摘が出た。別の株主からは「決意だけで進むのは旧日本軍と同じ。経営者として実現可能な、地に足の着いた方針を示してほしい」と批判が出た。これに対して数土氏は「がむしゃらにやってみせないとだめだ」と語るにとどまった。

 

 株主総会では、数土、広瀬両氏に代わって新会長に日立製作所名誉会長の川村隆氏、新社長に販売部門トップの小早川智明氏を選出、ほかの取締役も大半が入れ替わった。数土氏は退任、広瀬氏は、取締役を外れて福島担当の副会長に就いた。

 

 新社長の小早川氏は「縦割りや閉鎖性を打破する」と宣言。廃炉を除いて、原発部門を新たに発足させる社内カンパニーに移し、原発事業に対する責任の所在を明らかにする方針を示した。川村氏も「稼ぐ力を備えた会社に生まれ変われば、福島の責任も果たすことができる」と抱負を語った。

 

 両氏とも数土氏が認めた「実現できない経営計画」の修正についての認識は異なっていた。川村氏は「少しやればできるのではなくて、フルに能力を発揮したらできる、ちょっと上にある数値目標だ」と、「実現可能性」を強調したが、その根拠は示せていない。同氏は「数土前会長と広瀬前社長の経営陣で業績は黒字化した。企業文化も改善しつつあり、やりぬく方向性は出てきている」とも語った。

 

   また川村会長は、東電と取引がある日立との利益相反の懸念について質問され、「2016年まで日立の役員や相談役をしていたが、今は役職も報酬もない。利益相反はない。東電HDの指名委員会も指名する前に相当チェックした」と述べた。

 

 総会では、原発事業や新再建計画に対する批判や疑問が相次いだ。総会の出席者した株主は1206人。原発事故後では最も少なかった。開催時間は昨年より1分長い3時間4分。事故を起こした2011年の総会の半分だった。