一般社団法人環境金融研究機構 | Research Institute for Environmental Finance: RIEF

　G20各国による石炭や石油などの化石燃料関連事業への公的な投融資額が、2013~15年の年平均で718億㌦、世界銀行などの国際公的金融機関の投融資額を合わせると1229億㌦になることがわかった。3年間合計では3687億㌦（総額40兆円）に達する。最大の投融資国は日本で、年平均165億㌦と、G20全体の2割強を占める。「国主導の化石燃料依存大国・日本」の“汚名”が世界にとどろく実態だ。

　調査は、国際的NGOのWWFの欧州政策オフィス（EPO）、FOE・USA、シェラクラブ、それに米気候変動シンクタンクOil Change International（OCI）が共同で実施、報告書『G20の化石燃料政策における言動不一致：気候変動対策に逆行する巨額投融資の実態』(TALK IS CHEAP: HOW G20 GOVERNMENTS ARE FINANCING CLIMATE DISASTER)として公表した。

　それによると、G20各国の公的金融機関、輸出信用機関（ECA）等の年間平均投融資額は、太陽光などの再生可能エネルギーなどのクリーンなエネルギーへの投資額を4倍以上も上回る。日本はさらに6倍以上だ。パリ協定発効で各国は再エネ・省エネ事業促進の政策をアピールしているが、実態は、報告書の表題が意味するように「言動不一致」。化石燃料に公的資金（税金）を重点配分する構図は変わっていない。

　国・国際機関合計でのエネルギー関連投融資額は年平均1229 億㌦。このうち58%が化石燃料関連に、15％がクリーンエネルギーに投じられている。化石燃料の中でも石油・ガスへの投融資額が公的エネルギーファイナンス全体の半分を占める。また、公的なエネルギー関連投融資額は、民間資金を含めたグローバルなエネルギー関連の年平均投融資額1兆8000億㌦の7％を占めている。

　国別では、低炭素社会に向けた日本の「言動不一致」ぶりが際立っている。日本は石油・ガス分野への投融資でG20最大の公的資金供与国の“不名誉”を得た。特に、海外での石油・ガス等の開発事業に国際協力銀行（JBIC）と日本貿易保険（NEXI）の2機関だけで年平均116億㌦と、全体の7割を投融資している。その額はG20のECA全体の公的支援額の3分の1を占める大きさだ。

　ECAの投融資額でみると、日本のJBIC、NAXIに次ぐのは、韓国の韓国輸出入銀行（KEXIM）と韓国貿易保険公社（K-Sure）のコンビ。だが、年平均70億㌦と、日本勢の6割ほどでしかない。

　JBIC等の公的資金は日本のメガバンク等の民間投融資資金を誘導する形で供給される。したがって、官民合わせた化石燃料投融資額は、日本勢がダントツで多いことが容易に推察される。JBICはECAの中でも、最も多い投融資額となっている。石炭向け投融資額はG20の年平均で65億㌦。その3分の1強に当たる17億㌦を日本のJBICとNEXIが提供している。

　ECAの中では、米国やドイツ、オーストラリアなどで、石炭向け投融資を大きく削減する傾向が表れている。JBICやNAXIの場合も、2013年に比べて2015年は4分の1程度に減っている。ただ、日本の場合、一方で援助機関である国際協力機構（JICA）の石炭事業支援の援助等はこの間に28倍と急増している。このため報告書では「JBIC等のファイナンスを付け替えただけ」と批判している。

　化石燃料関連の投融資総額で日本に次ぐのは、中国。年平均135億㌦と、日本の約8割の水準。中国の再エネ等のクリーンエネルギー関連の投融資額は8500万㌦とまだかなり低い。次いで、韓国、米国、ドイツの順。