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10数カ所の米原発に、外国のハッカーが侵入。ロシアの関与説も浮上。我が国も原発のサイバーリスク対応は十分なのかどうか(RIEF)

2017-07-08 01:24:03

wolfcreakキャプチャ

 

  各紙の報道によると、カンザス州のウルフクリーク原発を含む少なくとも10数か所にのぼる米国の原子力発電所が、外国政府に雇われたと思われるハッカーの侵入を受けたことがわかった。関与が最も強く疑われているのはロシアとされる。複数の米国の現職および元当局者が明らかにした。

 

写真は、ハッカーの侵入が明らかになったカンサス州のウルフクリーク原発)

 

 ハッカー侵入の事実を明らかにした担当者らは、ハッカーの目的は配電網の脆弱性を探り、米国の電力供給を妨害する準備をしている可能性があると警告している。また、電力業界で使われる機器の制御システムを製造するある企業にも最近、ハッカーが侵入した事例があるという。担当者らは、これらの攻撃には関連性があると指摘している。

 

 ハッカーの侵入が確認された原発の一つは、カンサス州バーリントン近郊の湖に面して建てられているウルフクリーク原発。同原発は、Westar Energy Inc., Great Plains Energy Inc. and Kansas Electric Power Cooperative Inc.の各社によって保有されている。

 

 関与が疑われているロシアのハッカーは過去にもウクライナの電力網を2015年と16年に二度にわたって一時、機能不全に陥れた実例がある。それ以降、さらに電力供給網に対する攻撃力を高めているとみられる。また米情報当局が、昨年の大統領選挙にロシアが関与したとの結論を示したことに対する反発が、ハッカー側の要因の一つになっているとの見方もある。

 

 ブルームバーグによると、米国でのこうした見方が浮上していることに対して、ロシア政府のスポークスマンのDmitry Peskov氏は、「われわれはそのような無責任な偽情報に関心を持っていない」と、無関係を強調しているという。

 

 米国家安全保障局(NSA)によると、侵入に使われたサーバーは、ドイツ、イタリア、マレーシア、トルコの各国のものを経由していたという。

 

 G20首脳会議に出席しているトランプ米大統領が、7日にプーチン・ロシア大統領との会談で、こうしたサイバー攻撃問題を議論するかは不明。ただ、トランプ大統領は6日のワルシャワでの演説で、ロシアが「かく乱的な活動」を行っているとし、「責任ある国のコミュニティー」に加わるよう呼び掛けている。

 

 米国土安全保障省やFBIは、エネルギーセクターへの潜在的な侵入問題について意識しており、5月以来、電力会社等に警告を発していることを認めている。ただ、政府スポークスマンは、現時点では「一般市民に影響が出ている兆候は得られていない。行政面やビジネスネットワークへの潜在的影響についても限定的とみられる」と説明している。

 

 エネルギー省も同様の判断で、電力網事業者や電力会社と共同で、電力網の安全性と強靭性を強化していることを、強調している。

 

 またハッカーの侵入が確認されたウルフクリーク原発についても、原発の運営に支障が生じるような影響は起きてはいないという。同原発のスポークスマンによると、同原発の運用管理のコンピューターシステムは、企業のネットワークと独立しているため、運用会社のサイトに侵入しても、原発の運用管理には侵入できない、と説明している。

 

 米国で懸念が広がる原発へのハッカー侵入問題は、日本の原発についての懸念にもつながる。日本の原発にサイバー攻撃への対応が十分に備わっているのかどうか。ハッカーが原発の稼働を意図的に急停止させたり、あるいは高電圧を流すなどの不正操作を排除できる安全対策が取り入れられているかどうかが、気になる。

https://www.bloomberg.com/news/articles/2017-07-07/russians-are-said-to-be-suspects-in-hacks-involving-nuclear-site