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国際エネルギー機関(IEA)2016年の世界全体のエネルギー投資12%減少の1兆7000億㌦と公表。石油・ガスの開発コストの低下等が影響(RIEF)

2017-07-12 00:01:45

IEA1キャプチャ

 

  国際エネルギー機関(IEA)は11日、「2017年版世界エネルギー投資白書(Word Energy Investment 2017)」を公表した。それによると、2016年の世界全体のエネルギー投資は、前年比12%減の1兆7000億㌦だった。ただ、エネルギー需要の減退ではなく、石油・ガスの開発部門や再生可能エネルギーの太陽光発電等の単位当たり資本コストの減少等が、投資総額の縮小につながった。

 

 また、石油・ガス部門の新規掘削開発の減少、石炭等の化石燃料火力発電所の減少も、投資減に影響した。1兆7000億㌦の投資額はグローバルGDPの2.2%を占める。一方で、エネルギー効率化投資は前年比9%増、電力網への投資も6%増加した。ただ、これらの増加分は、石油・ガスの開発部門の投資が4340億㌦と前年比26%減と大きく落ち込んだことと、火力発電投資が同5%減などで相殺された。

 

  産業別では電力産業が、初めて石油・ガス産業を上回るエネルギー投資の最大の受け手となった。しかし、それでも石油・ガス産業は世界のエネルギー投資全体の5分の2を占めている。ただ、2014年から16年にかけての同産業の資本支出は38%の減少となっている。

 

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 こうした結果として、全投資に占める低炭素エネルギーを供給する投資の割合は、電力網への投資を含めて、前年より6ポイント増えた43%となった。

 地域別にみると、中国が引き続き最大のエネルギー投資国の座を維持した。世界全体の投資額の21%が中国に集中した。そのうち石炭火力発電への新規投資は25%減と大きく下がった。中国のエネルギー投資の中心は、太陽光などの低炭素電力供給とエネルギー効率化投資の増大によって支えられている。

 

GRAPH-Investment by Region

 次いで2番手の米国に続いて、3番手がインドだ。インドのエネルギー投資額は7%増と伸びた。モディ政権がインドの電力システムの近代化と延長をすすめたことが投資需要を高めた。さらに東南アジア諸国では経済成長に合わせてエネルギー投資も順調に拡大し、世界全体の4%を占めた。


 石油・ガス産業への投資額が急減したにもかかわらず、米国のエネルギー投資の割合は、シェールガス開発や再エネ投資の増大の結果、グローバル比で16%に増加した。欧州よりも高く、その欧州の投資率は10%減少となった。

 石油・ガス投資額は14年から16年の間に、44%もの減少になった。しかし、IEAは、今年は緩やかに回復し、約4600億㌦に増加するとみている。原油安に歯止めがかかり、米国のシェールガス・油への投資が53%増と大きく伸びるほか、採掘コストの低下で採算の見込める投資案件が増える。

 またOPECがロシアなどの非加盟主要産油国と1月から実施中の協調減産の影響で、中東やロシアなどでの投資需要が回復すると見込まれる。中国の国営石油会社も投資額を引き上げる見通し。中国では17年の投資額に占める国営企業の割合は45%と過去最高に達するとみている。

 

 ただ、石油メジャーは投資になお慎重な会社も多い。今年の投資額も各社合計で前年比1割減の900億㌦強にとどまると慎重な見方をしている。メジャーは投資採算を重視し、かつ投資サイクルの短いシェール開発に力を入れている。メジャーの投資額に占めるシェールの比率は16年の6%から今年は13%に倍増する見通し。投資期間が長く、開発リスクの高い海底油田の開発などは減らしている。

 

GRAPH-Oil and Gas Investment

 全体の開発コストは引き続き3年連続で低下が見込まれている。主に海洋開発分野でのデフレの影響が大きい。しかし、低下率は3%程度にとどまるだろう。米国のシェール開発は15~16年にかけて資本コストが半減したが、活動の再活発化とともにコストは16%上昇が見込まれる。

 石油価格の低下は、石油・ガス産業の投資資金需要にそれほど影響は与えそうもない。投資削減や開発コストの低下にもかかわらず、石油メジャー大手は14年後半から17年初めにかけて、1000億㌦以上も負債を増やしている。

  16年のグローバルな電力投資は前年比1%減の7180億㌦だった。発電所投資の減少を部分的に相殺する形で送電網等のネットワーク投資が増えたことが効いた。新規再生可能エネルギー投資額は3%減少したが、引き続き、投資額は電力分野では最大の2970億㌦となった。

 

 グローバルな再エネ投資額の2970億㌦は、5年前に比べて3%低かった。ただ発電設備量は50%増で、発電量も35%増だった。再エネの投資額減少は、単位当たり発電コストの減少に加えて、太陽光や風力発電の発電技術向上による発電効率の改善等が、投資額の低下に貢献しているという。

 

 石炭火力向け投資は、ほぼ20GWものキャンセルの発生で急減した。各地域でのばい煙規制や、中国のように超過供給状況が顕在化して、投資手控えが広がっている。ただ、インドなどでは引き続き石炭火力への投資需要は高い。16年の新規石炭火力発電の発電量は全体で40GWだった。

GRAPH-new coal investment

 ガス火力発電への投資需要は引き続き強かった。特に北米、中東、北アフリカでは安いガス田が豊富にあることから、投資が盛んだった。ガス火力は地域差が大きい。欧州では廃炉になる火力のほうが新規建設より多いという。

 原発は2016年中に10GW相当分が稼働した。原発発電力としては、過去15年で最も高かった。ただ、16年に発電できるようになった原発の建設決定は何年も前になされている。同年中に新規建設に入った原発は、3GW分に限定される。その多くが中国で建設されている。

https://www.iea.org/publications/wei2017/