HOME8.温暖化・気候変動 |地球温暖化の加速で、飛行機の離陸に負荷増大。積載量の10~30%を減らさないと「うまく浮き上がれない」。安全性に懸念。コロンビア大学の研究チームが分析(RIEF) |

地球温暖化の加速で、飛行機の離陸に負荷増大。積載量の10~30%を減らさないと「うまく浮き上がれない」。安全性に懸念。コロンビア大学の研究チームが分析(RIEF)

2017-07-14 21:32:17

airportキャプチャ

 

 米コロンビア大学の研究チームは、地球温暖化に伴う気温上昇の影響で、飛行機の離陸が今より困難になるとの研究を発表した。気温が上がると空気の密度は低くなり、翼が生み出す揚力が小さくなる。このため、航空機によっては満載状態では安全に離陸できない恐れがあるという。実際に、先月、アリゾナ州の空港で高気温により多数の航空機が離発着を中止する事態が起きている。

 

 コロンビア大学のイーサン・コフェル(Ethan Coffel)氏が主執筆者を務め、同大学のRadley M. Horton氏と米航空宇宙局(NASA)のTerence R. Thompson氏が共同執筆者。論文名は「The Impacts of rising temperatures on aircraft takeoff performance」。学術誌「Climate Change」に掲載された。

 気温が上がると空気の密度は低くなる。その結果、飛行機の翼が生み出す揚力が小さくなってしまい、航空機の機種や滑走路の長さなど条件によっては、旅客を満載状態では安全に離陸できない恐れもあるとしている。特に、熱波の襲来時には問題が顕著になるという。

 

 研究者たちは、世界の19の主要飛行場と、5機種の飛行機を対象として分析した。気温の上昇については、国連の政府間パネル(IPCC)の第5次報告書(AR5)が示した将来の予測値のうち、RCP4.5とRCP8.5の2ケースについて、航空機の運航に及ぼす影響を試算した。

 

 その結果、猛暑の日の最も暑い時間帯には、最大積載量まで積んだ航空機の10~30%は燃料・貨物・乗客を減らすか、気温が下がる時間帯まで離陸を待たなければならなくなる可能性があるという。

 

 さらに、温室効果ガスの排出量を抑制しない限り、今世紀半ばから後半にかけて、特に暑い日には燃料や乗客、貨物の積載重量を最大4%削減しなければ離陸できない場合が生じると警告している。機種によっては、中型機と大型機への影響が大きいほか、短距離滑走で飛行できる航空機へのダメージも大きいという。

 

 現在運行されている航空機のうち平均的な旅客機の場合、座席数160席前後として、4%の積載重量削減は、乗客を12~13人減らさなければならないことになる。こうした航空機の運航に及ぼす温暖化の影響に適合するため、航空機のデザインの変更や、航空便のスケジュール調整、場合によれば滑走路の長さの調整も必要になるかもしれない、と指摘している。

 

 先月20日に、米アリゾナ州のフェニックス・スカイハーバー国際空港では、気温49度を記録し、安全基準を上回ったため、合計43便の離発着を見合わせる事態が起きている。研究では、世界各地の空港の日最高気温は2080年までに年平均4~8度上昇すると予測している。また、沿岸部や海面埋め立てで建設された空港の場合、海面上昇により水没するリスクもあるとしている。

 

 https://link.springer.com/article/10.1007/s10584-017-2018-9