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カリフォルニア州議会、同州独自の排出権取引制度の2030年までへの延長法案を承認。全米の温暖化対策をリードする役割を確実に(RIEF)

2017-07-19 22:35:47

Californiaキャプチャ

 

  カリフォルニア州議会は、同州で独自に実施している温室効果ガス削減のための排出権取引制度(Cap & Trade)を、現行の2020年までの期限から、2030年まで延長する法案を賛成多数で承認した。トランプ大統領はパリ協定からの離脱を正式に宣言したが、カリフォルニア州は積極的な温暖化対策の継続で、全米の各州の先頭に立つ方針だ。

 

 同州のC&T制度は2006年に導入が法的に決まり、2013年1月から実施されている。同州の温室効果ガス排出量を2020年までに1990年レベルに抑制することを目標とし、大規模な発電事業者のほか、GHG排出量がCO2換算で年間25,000t以上の事業者(鉄鋼業、ガラス、セメント、発電、製紙等)に削減義務を課している。

 

 14年にはカナダのケベック州と連動し、15年には対象を燃料供給事業者に拡大するなどの展開をしている。C&T制度としては現在のところ、欧州連合(EU)のEU-ETSに次ぐ世界第二の規模となっている(年内に中国が全国版C&Tを開始すれば、3位となる)。ただ、2020年以降の取り扱いが定まっていなかった。

 

 同制度の延長法案は上院で28対12、下院で55対21と、賛成が反対を大きく上回り、民主党議員だけでなく、複数の共和党議員からも賛成を取り付け、法案を通すのに必要なスーパーマジョリティ条項(州の収入を増やす法案は3分の2の賛成が必要)も満たした。ジェリー・ブラウン知事の署名によって改正法が発効する。

 

 カリフォルニア州はこれまでも歴史的に環境政策で全米をリードする役割を続けており、今回もその面目躍如といえる。ただ、C&T制度の延長法案の取りまとめは決して容易ではなかった。一番の障害は連邦政府が、パリ協定から離脱を宣言し、環境保護庁(EPA)の温暖化政策を“骨抜き”にする方針を明確にしたことだ。

 

 また、同州内でも共和党議員は、他州に比べて厳し過ぎる目標の設定と、義務的政策の継続は、同州の経済に与える影響が大きいと難色を示してきた。一方で、環境保護団体や環境保護を重視する議員などは、改正法案が石油精製業などへの規制を緩める条項を盛り込んだことなどから、もっと厳格な規制を求め続けた。

 

 バランスをどこに求めるか。ブラウン知事は委員会での説明で「C&T制度はもっとも効率的で、もっともエレガントな制度」と自賛し、議員の賛同を求めた。既存の温室ガス排出企業にとって操業を継続しながら、経済合理的な削減手段を市場を通じて手に入れることができる制度の利点を強調した。その一方で、制度延長ができないと「強制的な削減規制を導入する以外にない」との“脅し”も使った。

 

 

 環境NGOのシェラクラブや、同州の「California Clean Air Coalition」のNGO、住民団体などは、延長法案が高排出企業に対して配分する排出枠が多すぎる、との批判を展開した。NGOは「法案は産業界を支援するものだ。特に石油産業のための法案だ」と知事を批判した。

 

 しかし、結果的に、こうした環境NGOの反発が、複数の共和党議員の法案賛成を引き出した。また、産業界の反対意見を鎮静化させる役割を果たしたとの見方も出ている。実際、トランプ政権のオバマケア法案を最初に粉砕した共和党のコーカスグループに属する州議会議員は、ブラウン知事に対して、「延長法案はカリフォルニアの住民や中小企業にネガティブな負担を強いる」と正面から阻止する構えをみせていた。

 

 微妙な政治バランスと、環境保護派、規制反対派等の思惑が入り混じる中でのC&T制度の延長決定は、同様のC&T制度を州レベルで導入しているニューヨーク州など東部9 州による北東部地域GHG削減イニシアティブ(RGGI)の今後の展開にも大きな影響を及ぼしそうだ。

http://assembly.ca.gov/