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環境省、独自のグリーンボンドガイドラインの活用促進で、国費でPR資金配分の「モデル事業」を公募。「二流ボンド」第一号候補に東京都(RIEF)

2017-07-24 16:14:33

MOEキャプチャ

 

  環境省が春に公表した「環境省版グリーンボンドガイドライン」に基づくボンド発行を「モデル事業」として、国の資金でPRすると発表した。グリーンボンドの発行を国費で宣伝するのは他国に例がない。東京都が第一号の候補のようだが、環境省ガイドラインは、国際的に認められているグリーンボンド原則(GBP)を完全には満たせない「二流のボンド」を想定しており、東京の国際金融センター化を目指す小池百合子知事の出発点としては、いささか“しょぼい”スタートになりそうだ。

 

 グローバルに成長を続けるグリーンボンド市場は、民間の金融機関が自主的に制定したGBPが市場の基本原則となっている。しかし、環境省は「日本のグリーンボンド市場は成熟していない」として、独自のガイドラインを決めた。その違いは、GBPはグリーンボンドの中核要素とする①調達資金の使途②プロジェクトの評価及び選定のプロセス③調達資金の管理④レポーティング、の4原則を示しているが、環境省は、これらを必ず満たさなくても、①さえ確認できれば、グリーンボンドとする、という点だ。

 

 中国やインドなども国内市場用のグリーンボンドガイドラインなどを決めてはいる。ただ、いずれもGBPとの連携の中で、基準としての整合性を図ったうえで、弾力運用をしており、日本の環境省のように、GBPとは別に独自のガイドラインを策定した国は無い。また、グリーンボンド市場を育成するために公的支援の事例としては、シンガポールの証券取引所が、ボンドの基準適合性を審査する第三者認証等の費用を補助する制度を今年から始めているが、国そのものが予算措置として公的資金を拠出する事例は、今回の環境省が初めてである。

 

greenwashingキャプチャ

 

 環境省が目指す「モデル事業」に応募できる対象者は、日本国内で事業を行っている法人、または地方公共団体など。今年度中に「グリーンボンド」を発行する予定がある者に限定している。現在までに国内市場でグリーンボンドを発行予定を宣言しているのは、東京都だけ。予算規模も200億円を計上している。ただ、200億円規模の発行では、国際市場での流動性が十分でないとも指摘されている。

 

 国際市場では東京都のグリーンボンド発行への期待は強い。しかし、発行額が200億円と小ぶりであることで、失望感があるうえに、今回の環境省の「モデル」対象になると、GBPには準拠しない「二流のボンド」であることを自ら宣言することにもなってしまう。そうなると、「東京」への失望感は増大しかねない。ただ、環境省のガイドライン作成のために編成した委員会のメンバーにも名を連ねており、東京都は「逃げられない」状況のようでもある。

 

 環境省がモデル事業として選定し、「国によるPR」を提供する場合の、「PR」の中身をめぐっても、議論が起きそうだ。発表資料では、何をどうPRするかは一切触れていない。通常、債券発行をPRする場合は、購入対象となる投資家向けに目論見書等を作成し、販売証券会社に委託料を払って、投資家への売込みを図る。これらの費用もPR費用として国が負担するとなると、他の債券との不公平感が生じ、債券市場の健全な競争を阻害する可能性もある。

 

 環境省はモデル事業としての認定については、第三者の「確認機関」を別途、指定し、客観性を確保するとしている。この確認機関については別途、入札で選定するとしている。環境省ガイドライン提言の委員会には、監査法人等で構成する日本公認会計士協会のメンバーが約3分の1も占めていた。http://rief-jp.org/blog/68140?ctid=33

 

 環境省と会計士協会が、「二流のボンド」審査を“出し”に、二人三脚復活を目指している可能性も指摘される。どの企業が「確認機関」の座を獲得するのかも、見ものだ。

 

http://www.env.go.jp/press/104255.html