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英国もディーゼル車、ガソリン車の販売を2040年までに禁止。二酸化窒素排出対策を最優先。「ハイブリッド車」も禁止対象か(?)(RIEF)

2017-07-27 02:02:36

UKcarキャプチャ

 

   英政府は26日、国内で走行するディーゼル車、ガソリン車の販売を2040年までに全面的に禁止する方針を打ち出した。自動車による大気汚染対策を抜本的に転換するもので、先にフランスが打ち出したディーゼル・ガソリン車禁止策と歩調を合わせることになる。英紙の一部は「ハイブリッド車(HV)も禁止対象の公算」と報じており、トヨタ等、日本の自動車メーカーの販売戦略にも影響しそうだ。

 

 環境大臣の Michael Gove氏が公表した。ディーゼル・ガソリン車の販売を禁止するのは、フランス、ノルウェーに次ぐ動き。だが、英国が追随したのは、英国独自の事情が大きく影響した。

 

 英国では、ディーゼル・ガソリン車から排出される二酸化窒素(NO2)の基準が欧州基準を上回る状態が長く続いており、2015年に最高裁が政府に対して直ちに削減対策をとるよう命じている。しかし、政府は明確な対策を打ち出さないまま「違法状態」が継続してきた。今回、最高裁が政府に指示した対策期限を直前に控えて、環境相が抜本対策を打ち出したわけだ。詳細な対策は月末に公表の予定。

 

 英国は温暖化対策を優先し、ガソリン車よりCO2排出量の低いディーゼル車を優遇してきた。その結果、ディーゼル車から排出量の多いNO2による呼吸器疾患等の健康被害が増大。年間4万人が早死にしていると推計されている。特に道路状況の悪い都市部での排気ガスによる悪化が目立っている。

 

 ディーゼル優遇策の政策失敗が明確になった形だ。同時に、温暖化対策でのCO2削減策も強化することが求められており、メイ政権も本格的な自動車排ガス規制に舵を切らざるを得なかったようだ。

 

 自動車全体を電気自動車(EV)に切り替える販売規制を打ち出す一方で、道路事情の悪い地方自治体の排ガス抑制支援として、2億5500万ポンド(約370億円)の予算を用意し、大気汚染対策に計約30億ポンドを投じる。渋滞を減らすための道路のレイアウト変更や汚染が深刻な地域では、規定を満たさない車両の乗り入れの禁止や通行に課金するなどの措置を導入する。

 

UKcar2キャプチャ

 

 ただ、英国での新車販売に占めるEV車の比率は1%以下。「エコカー」の主役はHV車で、英紙の報道でも、HV車の扱いについて判断が分かれている。HV車は燃費効率がガソリン車を上回るが、ガソリンと電池を併用するため、NO2、CO2を両方、排出するのも事実。

 

 英Guardianは「不必要な大気汚染を防ぐ英政府の規制方針には、HV車も含まれる」と指摘している。HV車の販売ではトヨタ、ホンダ等の日本車がリードしている。英国市場で“淘汰対象”となると、欧州市場全体にも影響する可能性もある。ただ、HV車はディーゼル車等からの転換を促すため、優遇買い替え対象とする、と報じるメディアもある。

 

 一方で、今回の保守党の政策に対して、野党は「手ぬるい」「ごまかし」といった批判があがっている。自由民主党(Liberal Democrats)は「2040 年では遅すぎる。2025年までに達成すべき」と主張。労働党は「排出削減の措置を直ちに実行せずにごまかす措置だ」と批判している。

 

 財政への影響も懸念される。ガソリン、ディーゼル油等の燃料課税の税収は年間279億ポンド(2016~17年:約4兆円)。税収全体の4%を占めている。この税収がゼロになると、交通安全対策や道路関連財源を失うことになる。EV車に新たな課税をする可能性が浮上するが、そうなるとEV車への移行が進まないことにもなる。

 

 いくつも課題はあるが、大きな流れは、ディーゼル・ガソリン車の市場は縮んでいき、EV車との中間的存在のHV車も市場拡大の終焉がチラついてきたようだ。自動車市場の競争はEVに絞られてきた。