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福島県浪江町に、再エネ発電利用の世界最大規模の水素製造工場建設へ。NEDOと東芝、東北電力など。東京五輪・パラリンピック開催の2020年度実用化を目指す(各紙)

2017-08-03 17:12:13

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  新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、東京電力福島第一原発事故で被災した福島県浪江町に、世界最大規模の最大1万kW級の水素製造工場を建設する実証研究事業を採択した。東北電力と東芝、産業ガス大手の岩谷産業(大阪市)の3社が参画。東京五輪・パラリンピックが開かれる2020年度に実証開始を目指す。

 

 同事業は参加各企業が2016年9月からシステム構成や、仕様、技術・経済性の成立情況等について評価を続けてきた。今回、レベルをあげた実証実験に移行することになる。3社は太陽光発電で水を電気分解し水素を製造する工場を浪江地区に建設する。同工場では、燃料電池自動車(FCV)で年間1万台分に供給できる水素900㌧を生産し、液化して輸送する。

 

 同実証実験に付随する形で出力2万kWの太陽光発電設備を整備する。実証設備は東芝が水素製造装置を担当、東北電が電力制御システム、岩谷産業は水素の需要予測システムの開発を担う。事業費はNEDOが負担する。再エネは供給に変動があるのが弱点だ。この工場は、太陽光などの再エネ由来の電力を、貯蔵や輸送がしやすく利便性の高い水素に安定的に変えることを目指す。

 

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 太陽光も風力も、発電に変動があることが課題だが、今回の実証試験では、電力系統の需給バランス調整(デマンドレスポンス)を盛り込んだ水素活用事業モデルと水素販売事業モデルを確立させることで、再エネ電力の安定性を確保、新たな付加価値を有する大規模水素エネルギーシステムの開発・実用化を目指すとしている。

 

 施設の建設予定地は、地震のため東北電力が建設を断念した浪江・小高原発の旧予定地。浪江町などによると、東北電が町に無償譲渡を決めている約120haのうち約25haを町が造成する。そのうち、水素製造工場に約4.5ha、残りに太陽光発電パネルを敷き詰める。工事は2018年6月ごろから順次、開始することを予定している。

 

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  東京五輪・パラリンピックでは、福島で製造した水素を選手村や大会車両のエネルギー源とする構想が進んでいる。浪江町の実証実験で生み出される「再エネ由来の水素」はその有力な供給源とみなされている。福島を「原発の地」から、
「水素」の先進地域に転じる期待が込められている。

 

 近隣の郡山市では、6月に福島県内では初となる水素ステーションが市役所に開所されるなど、インフラの整備も始まっている。同市ではステーション開所に合わせて、ホンダの燃料電池車クラリティ1台を公用車として導入した。同車の場合、約5分の充電で走行距離350km走行が可能な重さ約3.5kgの水素を注入できるという。

 

 福島県では、南相馬市でも水素ステーションの建設が計画されているほか、福島市や郡山市でも移動式ステーションの導入が計画されている。福島県では、今年度から水素ステーション設置への補助制度を開始。さらに今月からは燃料電池車購入への補助金支給も始める予定で、水素社会の実現に力を入れている。

  http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100810.html