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太陽光発電から作った水素を「カセット」に入れて、生協ネットで家庭・事務所に「宅配」。宮城県富谷市で実証実験スタート。日立製作所、丸紅も参加(RIEF)

2017-08-05 21:42:32

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 太陽光発電から作った水素を「カセット」に入れて、生協の配送食材と一緒に家庭に届ける。こんなエネルギーの”地産地消”システムの実証事業が、宮城県富谷市で始まった。同市と、みやぎ生活協同組合(仙台市)、丸紅、日立製作所が参加。生協の既存の物流ネットワークを活用するため、低炭素・低コストで水素を「宅配」することができ、地域分散型エネルギーシステムの実現に一歩、近づく。

 

 事業は「低炭素水素サプライチェーン実証事業」。宮城県が策定した「みやぎ水素エネルギー利活用推進ビジョン」に基づき水素社会構築を目指すもので、富谷市などは、CO2を排出しない未来都市をめざし、富谷市で構築した地産地消型システムを、宮城県内全域、次に東北全域、さらには全国に発信していくとしている。

 

 事業のユニークな点は、再生可能エネルギーの太陽光発電の電力が日射条件によって変動がある課題を克服するため、太陽光電力を水素エネルギーに転換することと、その水素を安定した「カセット」に入れて配送、自宅で簡単に電気、熱として取り出せる仕組みだ。

 

 太陽光発電は、すでに富谷市内にある、みやぎ生協の物流センター屋上に設置されている。同発電で生み出した余剰電力で水を電解装置で水素に変換する。製造された水素を貯蔵するのが「水素吸蔵合金カセット」だ。水素吸蔵合金は、冷却や加圧すると水素を吸収し、加熱や減圧により水素を放出する合金。その性質を利用して、水素をカセット内に貯蔵し、トラックなどで家庭や事業所などに配送する。お米、野菜、水素カセット1個、といった具合だ。

 

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 消費者らは、届けられた「カセット」を、配備された純水素燃料電池に取り付けるだけで、自動的に水素は電気や熱に再変換され、エネルギーとして利用できるわけだ。

 

 富谷市内での実証実験の対象となるのは、一般家庭3軒と生協1店舗、児童クラブ1施設の合計5施設。設置する燃料電池は家庭が700W、店舗は5kW。既存の太陽光発電や生協ネットを利用することから、低コストでエネルギーを提供できる。環境省の「地域連携・低炭素水素技術実証事業」に採択され、工事費や人件費など事業費数億円は補助金でまかなう。

 

 参加各事業者の役割は、日立製作所が、全体の取りまとめ役。システム全体の設計、水電解装置や燃料電池などの主要機器を調達・据付、需給バランスを保ちながら水素貯蔵・配送計画などを立案・運営する。丸紅は、事業化する上での経済性などの課題解決を担当。みやぎ生協は水素配送の実証を、富谷市は実証場所の提供と普及・促進に向けた啓発活動を、それぞれ担当する。実証実験は今月からスタートし、2019年度までに成果をまとめる予定。

  http://www.tomiya-city.miyagi.jp/soshiki/shichoukoushitsu/suiso.html