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国立環境研究所が、東京スカイツリーでCO2等大気汚染物質の観測。都市部の複雑なCO2排出濃度と排出源を分析。観測力も世界「『最高』水準」(RIEF)

2017-08-07 11:04:14

tree2キャプチャ

 

  国立環境研究所は、世界一高い電波塔、東京スカイツリー(東京・墨田)で二酸化炭素(CO2)などの温暖化ガスの観測を始めた。パリ協定の目標を達成するため、都市部の観測体制を強化するのが目的。ツリーの地上250mにある機器室内に大気観測スペースを設け、観測を開始した。都市部の地上250mでCO2を計測するのも、世界では例のないことだ。

 

 都市部の大気汚染物質の観測については、現在、衛星「いぶき」(GOSAT)による衛星観測が行われているが、地上観測の整備は遅れている。そこで、国立環境研究所は研究グループ(東京大学大気海洋研究所、気象庁気象研究所、国立研究開発法人産業技術総合研究所)とともに、東京圏からのCO2排出量をモニタリングするために、東京を代表する高所である東京スカイツリーでの観測を始めた。

 

 地上250mに設けられた大気観測スペースに設けられた分析装置は、その場で成分を分析できる。すでに昨年中に非分散赤外線吸収法によるCO2濃度の連続観測を開始しており、今年1月からはキャビティリングダウン分光法によるCO2、メタン、一酸化炭素(CO)分析計を導入、2月には、超高精度の大気中酸素濃度の連続観測を開始した。

 

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 ツリーでの現場分析に加えて、もう1つの観測方法として、ガラスの容器に現場の大気を採取し、つくば市の国立環境研究所に持ち帰って、実験室で詳細に分析する手法(フラスコサンプリング)も並行して実施している。この方法では、CO2、メタン、一酸化二窒素、CO、六フッ化硫黄の濃度、ならびに安定炭素同位体比(13CO2)と放射性炭素同位体比(14CO2)の分析も行える。

 


 またCO2濃度だけでなく、CO2中の放射性炭素同位体比と大気中酸素濃度を高精度で分析することで、そのCO2が植物の呼吸から出たものか、化石燃料を燃焼して出たものかが推定できる。さらに、CO2濃度と同時に酸素濃度を分析することで、燃焼された燃料が天然ガスなのか、石油なのか、を推定できる。CO2発生源が複雑に点在している都市部の汚染状況を詳細に分析できるという。

 

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 これまでの初期調査によると、東京スカイツリー周辺のCO2濃度は、富士山頂と比べ、①最大で100ppm以上の非常に大きな変動が数日周期で現れる②濃度が低い時でも、夏期(7〜8月)以外は常に数ppm以上高い、ことなどが判明している。富士山頂のCO2濃度を上回る部分が、東京や周辺の地表面で排出されたCO2濃度とみられる。

 

 大都市での温室効果ガスと関連物質の大気観測は、フランスのパリや米国のインディアナポリス、ロサンゼルス、国内では代々木などの限定的な地域でしか実施されておらず、今回のツリーでの観測は「貴重な観測になる」(国立環境研究所)としている。

http://www.nies.go.jp/whatsnew/20170727/20170727.html