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金融庁、金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報タスクフォース(TCFD)の報告説明会。「『重要性の原則』の観点から関心」「ガバナンスコードの対話手段に」(RIEF)

2017-08-08 12:34:20

FSAキャプチャ

 

 金融庁は7日、金融安定理事会(FSB)・気候関連財務情報タスクフォース(TCFD)の最終報告書の説明会を開いた。その中で、金融庁の担当者は「報告書は、民間主導の自主的、任意の取り組みを促すことが基本。(金融庁も)投資家の投資判断上重要な情報を開示する『重要性の原則』の観点から関心を持っている」と述べた。東京証券取引所との共同によるコーポレートガバナンスコードでの投資家と企業の「対話」に活用される期待も示した。

 

 金融庁がTCFDについて、公式に説明と見解を明らかにしたのは初めて。説明会には金融庁総務企画局総務課国際室の池田賢志室長、TCFDに唯一の日本人メンバーとして参加した東京海上ホールディングス事業戦略部部長兼CSR室長の長村政明氏が出席。報告書の内容説明とともに、金融行政での取り扱い等についての認識を示した。

 

 池田室長は、報告書の性格を「企業による自主的、任意の取り組みである」ことを再三、強調したうえで、「任意の自主的な取り組みだが、先進的企業の中にはこうした取り組みにすでにコミットしている企業もあり、それらの企業は自らのサステナビリティをステークホルダーに開示することで、中長期的に企業の価値を高めていく取り組みとしている」と指摘。気候情報開示がすでに投資家との『対話』に活用されていることを指摘した。

 

 またTCFD報告書の枠組みについて、UNEP(国連環境計画)が立ち上げているFinancial Initiative(FI)などの行動原則に「近いものと理解していい」とも述べた。報告書がとらえる気候変動のリスクについては、「リスクは二つ。物理的リスクと移行リスク。前者は、気候変動が自然災害の増加や平均気温の上昇などを通じて与える影響のことで、後者は気候変動を抑制する政策がもたらすリスクと機会を開示すること」と、温暖化政策自体が企業にとってのリスクになるとの視点を示した。

 

 報告書の趣旨を金融行政の中にどのような形で取り組むのかという点では、シンガポール証券取引所が今年度から実施する上場企業への持続可能性報告書の開示義務付けの中で、TCFDの報告内容を盛り込むよう促していることを例としつつ、日本では、東証と金融庁が推進するコーポレートガバナンスコードでの取り組みの中での位置づけに言及した。

 

  ガバナンスコードは、環境・社会・ガバナンス(ESG)のリスクについての取り組みの開示と、企業と株主・投資家との「対話」を促している。池田室長は「そうした対話の一つの材料として、この報告書の提言が活用されることが期待されている」と述べた。

 

  また自主的開示から将来の会計基準としての義務的開示への展開については、「会計基準としてTCFDが提言した報告書を具体的に反映していくという要求が現在、必ずしもあるわけではない」としながら、開示の枠組みとして統合報告のような形で非財務情報の開示を促していく検討が多様に行われている、と指摘した。

 

 TCFDが求める気候変動情報の財務情報としての開示は、最終的には日本なら有価証券報告書での開示となるが、この点では長村氏が、「究極的には(開示の場は)有価証券報告書になる。ただ有価証券報告書に掲載することは監査法人の監査という非常に高いハードルがある。TCFDはそこをあまり厳格にはとらえていない。大事なことは気候情報が投資家に伝えられることにある」と説明した。

 

 有報への義務的開示に至る前に、任意で、アニュアルレポートや環境報告書、サステナビリティ報告書、統合報告書等での開示を積み上げることの重要性を強調した。

http://www.fsa.go.jp/