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前米財務副長官のラスキン氏、米責任投資機関の理事に就任。財務・金融の「主流派」が非財務分野を重視する動きの一つか(RIEF)

2017-08-14 23:14:46

Raskinキャプチャ

 

  前米財務副長官で米連邦準備理事会理事も務めたサラ・ブルーム・ラスキン(Sarah Bloom Raskin)氏が米国で責任投資を運営する「i(x) investments」の理事に就任した。ラスキン氏は今年1月まで米財務省のナンバー2の要職を占め、財務省史上、もっとも高いランクのポストに就いた女性として知られる。

 

 「i(x) investments」は2015年に設立された若い責任投資の資産運用会社。ラスキン氏は「市場の力と経済の成長力を、人類が直面する社会的課題、環境的課題の解決に適用するという現代社会の大いなる挑戦に参加できることを喜んでいる。社会、経済、環境の各面の進展が、われわれの投資の基本的なベースラインになるだろう」とコメントしている。

 

 ラスキン氏はマサチューセッツ州メドフォード出身、アマースト大学では金融政策で、ハーバード大学では法学でそれぞれ学位を取得。米上院銀行委員会付きの弁護士などを歴任。2007~10年には米メリーランド州の金融規制当局の責任者を、2010~14年には米連邦準備理事会(FRB)理事に就任するなど、財務・金融政策の主流を歩んできた。

 

 その専門性を評価され、オバマ大統領時代に、財務省ナンバー2の要職に就任した。FRB時代を通じて、金融規制改革法(ドッド・フランク法)の実施ルール作りなどに深く関わり、銀行の自己勘定取引を禁じる「ボルカー・ルール」の厳密な適用を支持するなど、金融機関にとっては「タカ派」とみなされてきた。

 

 ラスキン氏は、ヒラリー・クリントン氏が大統領選挙に勝利していれば、次期財務長官の有力候補ともみなされていた。いわば財務・金融政策での“主流派”であるラスキン氏が、環境・社会的課題を投資判断に際して重視する責任投資機関の一員に参画することは、金融界およびESG関係者の両方から驚きを持って迎えられている。

 

 「大物」を迎え入れたi(x)の CEOのTrevor Neilson氏は「ラスキン氏がわれわれの『ボード』に参加してくれたことは、素晴らしいことだ。われわれの顧客である投資家は、資本市場の力がポジティブば社会変革を作り出すことを信じている。彼女のリーダーシップはわれわれの次なる成長を支援してくれるだろう」と歓迎のコメントを発表している。

 

 金融市場の安定を目指すグローバル機関の金融安定理事会(FSB)が先に、気候関連情報タスクフォース(TCFD)の提言として気候変動リスクと機会を財務的に評価する枠組み作りを求めるなど、環境・社会的課題を金融政策の中心課題の一つに位置付ける流れが起きている。ラスキン氏の責任投資分野への参画も、そうした金融の「主流派」が環境・社会課題を金融・経済政策の文脈の中で積極的に捉える動きとみることができる。

 

http://www.ix-investments.com/blog