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ウランを使わない次世代原子炉「トリウム溶融塩炉」の開発。日本の2社が、カザフスタン国立核物理研究所と共同実験へ(各紙)

2017-08-14 23:08:17

torichiumキャプチャ

 

 各紙の報道によると、放射線防護機器製造の千代田テクノル(東京・文京)と原子力ベンチャー企業のトリウムテックソリューション(TTS、東京都町田市)は、次世代原子炉「トリウム溶融塩炉」の開発の一環として、材料となる「溶融塩」の開発をカザフスタン国立核物理研究所と協力して進める。「トリウム溶融塩炉」の利点は、プルトニウムを生み出さないので核拡散を防止できるなど。

 

 現在、主要国の原発開発は東京電力福島第一原発事故以降、安全性コストの上昇で大きな課題を抱えている。そうした中で「第四世代」と呼ばれる次世代原子炉は、核不拡散、安全性、廃棄物対策の各主要課題を解決するため、設計思想自体を従来と変更して、いくつかの方法論が検討されている。「トリウム溶融塩炉」はその一つ。

 

 元々は、米国オークリッジ国立研究所が1965年に建設した「トリウム熔融塩炉実験炉(MSRE)(運転期間は4年間)」に由来する。これに実用化の可能性を与えたのは、TTSの初代社長の故古川和男氏。1985年に、発電と増殖を別の原子炉で行ない、発電に特化した「トリウム熔融塩炉(FUJI)」を設計したことがきっかけとされる。


 燃料にプルトニウムを作らないトリウムを採用することで、核拡散防止につながるほか、原理上はプルトニウムを燃料に混ぜれば消滅処理が可能とされる。軽水炉使用済み核燃料処理の問題解決につながる期待がある。トリウムは自然界にウランより豊富に存在する。

 

 燃料は固体ではなく、溶融塩と呼ぶ液体状の化学物質に溶かして炉内で核反応を起こす仕組みだ。液体燃料とすることで、稼働時の安全性が高まるとともに、燃料コストの低下も期待される。

 

 千代田テクノルとTTSは今回のカザフスタンでの共同実験では、特殊な金属容器に溶融塩を入れ原子炉で長期間、放射線をあて性質に変化がないかなどを調べる。実験開始は来年を目指している。

 

 両社は今回の実験を踏まえて、すぐに原子炉開発に進むわけではないと説明しているという。当面はカザフスタンの協力の下、他国からの溶融塩性能評価の受託事業に取り組んで経験を積む、と慎重な姿勢をとっている。

http://www.ttsinc.jp/index.html

http://www.c-technol.co.jp/