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中国のグリーンボンド市場を推進してきた中国人民銀行のチーフエコノミスト、馬駿氏、11月で退任へ。清華大学教授に就任へ(RIEF)

2017-08-21 08:16:41

maキャプチャ

 

 中国のグリーンボンド市場づくりを主導した中国人民銀行(PBoC)チーフエコノミストのMa Jun(馬駿)氏が11月に退任する。同氏のPBoCとの契約はすでに4月で切れ、現在、半年延長されている状態という。

 

 馬氏の退任は、2014年4月のPBoCに就任時に結んだ契約条件に基づく。同氏は中国のグリーンボンド発行の土台となる国内ガイドラインの作成を主導したほか、同国の経済・金融界のグリーン化の推進役として活躍、欧米の関係者からも高い評価を得てきた。

 

 退任後は中国北京市で名門大学の清華大学教授に就任するとみられている。ただ同氏は、現在、人民銀行が設立した「グリーンファイナンス委員会(GCF)」の議長でもあるが、同ポストの任期は2019年まで残っているため、引き続き継続する。

 

 馬氏は人民銀行のチーフエコノミストに就任する前は、13年にわたってドイツ銀行の中国担当のチーフエコノミスト、中国・香港戦略チームのヘッドを務めていた。ドイツ銀行の前は、国際通貨基金(IMF)、世界銀行のエコノミストを歴任するなど、欧米の金融調査の最前線を歩んできた。2009年から2012年にかけて、国際金融誌が選ぶ「アジアNO1」、「中国NO1」のエコノミストとしての評価を得ている。

 

 このため、同氏がこのまま学究生活だけに身を転じると考える人は少ない。市場の観測でも、清華大学自体、人民銀行や政府との関係が深いことから、同氏は習近平国家主席が推進している「一帯一路」の貿易・インフラ戦略や、マクロ経済政策、金融リスク対応、それにグリーンファイナンスなどの多様な領域での経済分析面でのリード役として、むしろ活動の場を広げるのではとの見方が出ている。

 

 さらに、グリーンファイナンス関連でも、11月までの延長期間中に、同氏の手腕への期待が高まっている。それが自らが手掛けたグリーンボンドガイドラインの国際水準への引き上げだ。

 

 2015年末に公表された中国の国内版グリーンボンドガイドラインは、中国版のグリーンボンド発行を急増させる大きな成果をあげた。その一方で、国際基準のグリーンボンド原則(GBP)と国内版の食い違いも無視できない状況になっている。

 

 中国の国内版ガイドラインは、グリーンボンドの資金調達先の一つに、超々臨界圧石炭火力発電(USC)を「クリーンコール」として認めている。エネルギーの過半を石炭に依存する中国市場の現状を踏まえ、石炭を燃料としつつ、よりCO2排出量の少ないUSCへの切り替えならば、「グリーン」に認めるという「中国流」だ。しかし、国際的な投資家からは疑念を向けられている。

 

 グリーンボンドに各国の個別事情を組み込むのは、日本の環境省が3月に公表した「環境省版ガイドライン」でも同じだが、中国ではこうした「国内事情への配慮」は市場の拡大に逆行するとの理解が進んでいるようだ。政府・人民銀行はすでに国内版と国際版のギャップを埋める作業に入っており、馬氏はその作業を主導しているという。

 

 中国のグリーンボンド市場を国際水準にまで引き上げた後、馬氏の「次の活動」の場が、政府主導の「一帯一路」のグリーン・インフラ化になるかどうか。馬氏の動静に当分、目を離せない。

http://www.pbc.gov.cn/english/