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EUが、電気自動車などのゼロエミッション車(ZEV)のクォーター制(割り当て)導入の可能性。2030年までに。ディーゼル車、ガソリン車は販売禁止へ。11月のCOP23で宣言か。(RIEF)

2017-08-22 17:46:39

ZEV1キャプチャ

   欧州連合(EU)が、2030年までに加盟国ごとに電気自動車などのゼロエミッション車(ZEV)の販売数を割り当てるクォーター(割り当て)制度を導入する可能性が浮上してきた。欧州議会が来月にも同制度導入を採決するとみられるほか、欧州委員会も11月の国連気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)までに同制度導入に踏み切るのでは、との観測が出ている。先に英、仏などが電気自動車優遇策を打ち出しているが、EUの共通政策になると、世界の自動車市場に大きな影響を及ぼしそうだ。

 

 欧州議会はすでに6月に環境委員会が「EU低排出自動車戦略」の中に、域内でのZEV普及のためクォーター制を導入する意見をまとめている。想定されているのは、年間の域内での自動車販売数の25%を電気自動車などのZEVとするクォーター制を2025年までに段階的に導入する一方で、ガソリン車とディーゼル車などの販売を2035年ころまでに禁止する案だ。

 ただ、欧州議会は通常の国の議会とは異なり、議決しても直ちに法規制が成立することにはならない。EUの閣僚理事会に諮って共同提案の形で政策化する手順をとる必要があるためだ。しかし、すでにEUの行政府に当たる欧州委員会も閣僚理事会と同制度の導入について、水面下のでの調整を進めているとの観測が夏前から相次いでいる。

 11月にドイツのボンで開くCOP23で、EUがZEV対策を華々しく打ち上げれば、気候変動政策で後ろ向きな姿勢をとるトランプ政権の米国とは対照的になり、温暖化対策でグローバル・リーダーシップを発揮できるとの政治的思いもあるようだ。

 EUはこれまで、自動車の排ガス対策では日本などと違って、ドイツ車を中心にディーゼル車を低公害車の主流として推進してきた。しかし独フォルクスワーゲンのディーゼル車不正排ガス規制事件の発覚を機に、ディーゼル車の環境影響の大きさが露呈した。

 英仏オランダなどが相次いで、2040年前後を目標として電気自動車などのZEV優遇策と、ディーゼル車、ガソリン車の販売禁止を打ち出した背景には、ハイブリッド車では日本車に追いつけないことから、一気に電気自動車中心にハンドルを切ることで、ZEV市場で巻き返しを狙う意図もあるようだ。電気自動車では米国のテスラなどが先行しているが、各国市場の販売戦略と密着したクォーター制度とすることで、欧州車の挽回余地を高めるとの期待もある。

 ZEVのクォーター制度のモデルとされるのが、米カリフォルニア州が温暖化対策で実施している割り当て制度だ。同州では、州内で決められた台数以上の自動車を販売するメーカーは、その販売台数の一定比率をZEV規制に対応しなければならないというもの。カリフォルニアでは、ZEV規制を満たせないメーカーは罰金を払うか、他社からZEVクレジットを買うという政策も行われている。ZEVを優遇、それ以外のハイブリッド車なども“排除対象”となっている。

 欧州委員会のスポークスウーマンのMina Andreeva氏は、市場で相次ぐクォーター制度の観測に対して、「低公害車のクォーター制規制の検討は全くしていない。EUは自動車のエコカー技術に関してはニュートラルな立場を維持している」と述べ、特定のエコカー技術を優先的に割り当てる考えはないとの説明を繰り返している。

 これまでZEV優遇策導入の障害になるとみられてきたのがドイツ。ディーゼル車で強い市場支配力を持っているためだ。英仏オランダが電気自動車優遇策を打ち出しても、ドイツは「音無し」の構えを続けている。ただ、そのドイツ車も、ダイムラーが9月のフランクフルト国際自動車ショーで、外部から充電できる燃料電池車(FCV)の発表を予定していると報道されるなど、ZEVシフトを鮮明にし始めている。

 自動車業界のつばぜり合いの一方で、政治的な事情も微妙に変わりつつある。ドイツは9月に総選挙を控えており、メルケル政権としても環境意識の高いドイツの有権者の目を意識せざるを得ない。また地元のボンで開くCOP23を成功裡に導く上でも、「ディーゼル車からZEVに切り替えたドイツ車」のアピールは重要性を持つとの見方もある。

 英国の環境情報サイトでは、EU域内の議論に詳しい情報筋の話として、すでにEUの気候変動、産業、エネルギー同盟、運輸の各担当閣僚レベルでは、強制力を持つ目標の設定(Tough enforceable targets)で合意に達している、との情報を紹介している。

 「EUの閣僚理事会はZEV規制導入の強い意志を示している。自動車産業はすでに『文句を言うな』と警告され、ZEVの生産に切り替える準備をするよう求められている」という。電気自動車への切り替えを中心としたZEV化の流れは加速しそうだ。

http://www.europarl.europa.eu/portal/en