カーボンクレジット認証の「Gold Standard」が、パリ協定とSDGs目標との整合性を認証する新規格制定。「グリーン・ウォッシュ」「SDGs・ウォッシュ」を排除へ（RIEF）
2017-08-21 08:09:39
気候変動のカーボンクレジットなどの認証を提供している国際的NGOのゴールドスタンダード（Gold Standard）は、パリ協定と、国連の持続可能な開発目標（SDGs）と整合する事業を選ぶ新たな認証規格を開発した。新規格は「Gold Standard for the Global Goals（国際目標のためのゴールドスタンダード）」と名付けられた。
新認証規格は、パリ協定とSDGsの二大国際目標の達成と整合的な気候変動対策や持続可能な開発事業を評価・認証・支援することを目指す。認証を習得する対象は、事業を展開するビジネス、政府、投資家のいずれでもいい。認証対象の事業は、気候変動の効果のほか、少なくともSDGsの17の目標のうち、3つの目標の改善に資する貢献が求められる。
新規格の認証は、新たに始める事業は当然、対象となるが、既存のゴールドスタンダード認証を得ている気候変動対策事業などについても、SDGs貢献などがある場合は、新認証規格に移行することができる。
パリ協定に基づく各国の対策は多様で、個々の事業のいずれが協定の目標に適合しているかを判断するのは容易ではない。中には、政府レベルで「グリーン・ウオッシュ（グリーンもどき）」政策を採ろうとする動きもある。SDGsもしかりで、従来型の政治的な途上国援助を「SDGs支援」と名前だけ変更するケースも少なくない。
ゴールドスタンダードの強みは、 WWF を筆頭とする国際的なNGOがメンバーで、NGOの視点で、事業の持続可能性、ベストプラクティスを評価できる点にある。政府主導の「グリーンウォッシング」についても厳しい選別の目を向けることができる。
ゴールドスタンダードCEOのMarion Verles氏は「世界の気温上昇をパリ協定の目標である2℃未満に抑制し、SDGsの諸目標とも合致させるためには、とるべき気候変動行動は全体をカバーし、高い影響を持たねばならない。またSDGsは民間企業や政府機関の多様な活動の中で大きな優先度を持つようになるが、正確な測定と進捗状況のレポーティングが欠かせない」と指摘、新認証規格の必要性を強調している。
従来のゴールドスタンダードは、カーボンクレジットを創出できる気候変動対策事業などに限って認証を与えるもの。これに対して新規格は、従来のカーボン削減事業評価に加えて、クルーンエネルギーや水資源へのアクセス、雇用創出、健康改善、生態系保護などの「Beyond carbon mitigation」の追加的ベネフィットも定量化し、認証を与えるという。
新規格は、各国政府による野心的な気候変動対策を促すインセンティブ策と同様に、大規模なクリーンエネルギー技術や世界中の主要都市での持続可能な開発・発展に認証を付与することで、必要な数百億㌦規模の新規投資資金を、金融市場から動員することが期待されている。
特に世界の都市の持続可能な開発の推進に貢献することが期待されている。世界銀行によると、グローバルなCO2排出量の約75%の排出寄与度を占めるが、グローバル気候ファイナンスのうちわずか15%以下しか都市の気候変動対策には資金が流れていないという。さらに途上国の大都市500の場合、国際的な投資対象になる都市は、わずか4%に過ぎない。
ゴールドスタンダードでは新規格に「Urban Development module」を設け、都市デベロッパーらがベストプラクティスの事業をデザインし、実施することを支援するという。また、よりクリーンな都市の空気、健康改善のような気候と開発の影響を定量化するとともに、投資家等に見える形での情報開示を促すことで、投資家資金を集めやすくすると同時に、一般市民の賛同も得やすくなるとしている。
ゴールドスタンダードは2003年に、WWFを含む多くの国際的NGOが、京都メカニズムのクリーン開発メカニズム（CDM）によるカーボンクレジット創出事業を認証するために立ち上げた非営利組織。再生可能エネルギー発電などの品質も認証している。支援NGOは80以上に上り、これまでに認証した事業は世界80カ国で1400以上となっている。
Research Institute for Environmental Finance