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CO2から「グリーン・コンクリート」を生成。豪企業が、CCS(カーボン回収・貯留)技術を応用して、カーボン活用の商用化目指す。2020年にも実用化へ(RIEF)

2017-08-28 08:00:43

concreteキャプチャ

 

  温暖化対策として、排出したCO2を回収・貯蔵するCCS技術が知られるが、回収したCO2をコンクリートに封入し、建設資材の「グリーン・コンクリート」にするパイロット事業がオーストアリアで始まる。2020年には本格商業化を目指すとしている。

 

 パイロット事業に取り組むのは、カーボン利用技術会社の「Mineral Carbonation International:MCI」という企業。 オーストラリアの「ニューカッスル・エネルギー資源研究所」で 2020年には本格商業化を目指すとしている。

 

 パイロット事業では、CO2を科学的に結合させるプロセスを実験する。まず、大きなシリンダー状のものにCO2を貯蔵し、細かく砕いた鉱石 (蛇紋岩:serpentinite)を混ぜ合わせて水と圧力を加える等で、固形の炭酸塩に変化させることができる。仕上がった「グリーン・コンクリート」の強度は、通常のコンクリートと変わらないという。

 

MCI3キャプチャ

 

 MCIは「このコンクリートは“岩石の模造品”ではある。だが、自然界で数百万年以上をかけて生成される岩石と共通の強度・成分を持つ。生成される炭酸塩と副産物のシリカはビルの構造材のコンクリートや、プラスチックボードのように利用することができる」と述べている。「グリーン建築資材」というわけだ。

 

 MCIではパイロット事業で実証データを検証した後、 2020年までに、年間2万㌧~5万㌧をビル建設業者に供給する考えという。 製造コストは、追加的なカーボン価格を伴わなくても、十分に競争力を持てる見通しという。建設業界も、この建材をビルの構造物として取り入れることで、「ホンモノのグリーンビルディング」をアピールできるメリットもある。

 

 MCIのCEOのMarcus Daweは「グリーン建材、グリーン・コンクリートには、膨大な市場ニーズがある」と市場の成長をにらむ。CCS技術にとっても、改修したCO2を製品化して利益を上げることで全体のコストダウンが見込めることになる。

 

 Dawe氏は「 材料となる岩石(蛇紋岩)は世界中で供給可能で、各地で経済的に生産することができる」と指摘。将来は、毎年、世界全体で40億㌧分のグリーン・コンクリートあるいはセメントを供給できる、との展望を想定している。

 

 また建材としての使用だけでなく、旧鉱山や石切り場の跡地を、これらの「人口岩石」で埋めることで、CO2の安全な貯蔵と環境破壊の改善効果を同時達成する方法も考えられる、としている。

 

 ただ、CCS技術との連動によるコストダウンは、石炭火力発電等の存在継続を意味する。このため、同技術の実用化への懸念とともに、グリーン・コンクリートが想定通りに経済的に活用されるかどうか等、いくつかの不確定要素もある。

 

 豪州のメルボルン大学の Peter Cook教授(地質学)は「技術的に可能だ。カーボン排出量削減に貢献するだろう。ただ、問題は、研究室での成功が、経済ベースでのスケールアップにつながるかという点だ。今後の展開次第だろう」と指摘している。

 

 CO2などの温室効果ガスを経済財に転用する技術開発は他にも進んでいる。カナダでは、CO2から合成ガソリンを製造したり、水素ガスを製造する事業者が展開している。米国でもメタンガスからプラステチックを製造する事業者が登場している。日本のこの分野での研究情報はあまり聞かれないが、どうなのか。

http://mineralcarbonation.com/