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富士フィルムホールディングス。2030年度目標の新CSR計画、CO2削減は13年度比30%削減。自社削減できない分は、製品・サービス使用による「社会の削減貢献」を取り込み「実質ゼロ」と強調(RIEF)

2017-09-01 18:14:09

fujifilm2キャプチャ

 

 富士フイルムホールディングスは、2030年度を目標とした新CSR計画「サステナブル バリュー プラン(Sustainable Value Plan)2030:SVP2030」)を公表した。環境分野ではCO2排出量と水資源について2030年度の数値目標として、2013年度比それぞれ30%削減を設定するとともに、自社製品・サービスの利用を通じた社会の削減貢献分を「自社の未削減分」と相殺し、「実質削減ゼロ」と強調している。

 

 パリ協定や国連の持続可能な開発目標(SDGs)を踏まえて、2030年~50年に、CO2排出量ゼロを目標に掲げるグローバル企業が相次いでいる。富士フィルムは「SDGsやパリ協定など、社会課題解決に関する目標達成への貢献を目指し、2030年度をターゲットとした」と、より身近な目標を設定した。

 

 2030年度の自社製品のライフサイクル全体でのCO2排出量目標は2013年度比30%削減止まり。だが、30年度までに排出するCO2の累積量と同等レベルを、「自社製品・サービスの普及による社会でのCO2排出量削減5000万㌧への貢献」でオフセットする、との考えを打ち出している。この「自社製品の使用に伴う削減分」を加えて、30年度の排出量は実質ゼロになるとの説明をしている。

 

 他の企業などの場合、自社の排出削減で足りない部分は、市場からオフセットクレジットを購入するなどの形で、実質的な削減費用を支払うケースが多い。同社は「クレジットは考えていない」(経営企画部CSRグループ)という。

 製品・サービスの使用段階のCO2排出量の削減は自動車や家電製品などにとって、使用に伴う排出問題が課題の一つであるのは間違いない。同社がそうした使用段階でのCO2削減を推定し、企業として削減努力の対象とするのは一つの考え方といえる。

 ただ、30年度までの自社削減以外の「利用者削減」分というのは、あくまでの将来売り上げに基づくものでしかなく、かつ利用者の使用行動も推計でしかない。そうした売り上げ見通しが妥当かどうかは、まさに企業の競争力次第であり、当該企業が自ら宣言するだけでは市場に対して説得力を欠くと言わざるを得ない。「5000万㌧」の自社製品・サービスが生み出す社会的削減効果の評価は、第三者評価を得るなどの信頼性確保が必要だろう。

 

 パリ協定の目標達成への貢献をアピールする市場競争上の必要性から、CO2排出量「実質ゼロ」の宣言競争のような動きも起きているが、「実質」の中身があいまいな宣言では、かえって市場、消費者から疑念を抱かれ、逆効果になるリスクもあることを忘れてはならないだろう。

 同社はCO2排出量削減目標だけでなく、水資源についても、30 年度に30%削減(13年度比)の3500万㌧以下に抑制するとし、その3500万㌧分も、自社の製品・サービスを利用した水処理での高機能材料やサービスの提供によって実現する、としている。

 環境分野以外の「健康」分野では、「ヘルスケアにおける予防・診断・治療プロセスを通じて健康的な社会を作る」、「生活」分野では「生活を取り巻くさまざまな社会インフラをハード、ソフト、マインドの面から支える」、「働き方」分野では「自社の働き方変革を、誰もが『働きがい』を得られる社会への変革に発展させる」ことを目指す、などと定性的な目標を掲げるに、とどまっている。

http://www.fujifilmholdings.com/ja/news/2017/0830_01_01.html?_ga=2.104841666.374486317.1504237488-1018039470.1498640174