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環境省、同省版グリーンボンドガイドライン普及のため、低炭素事業と組み合わせた新補助金制度で20億円予算要求へ。民間資金の活用より、公的資金バラマキの懸念(RIEF)

2017-09-05 00:35:47

MOEキャプチャ

 

  環境省は来年度の予算要求の中で、同省版グリーンボンドガイドラインを活用してグリーンボンドを発行体する事業体に、補助金を配分する「低炭素化モデル推進事業費」を新たに設け、20億円を計上した。同省は今年度もグリーンボンド発行体向け補助金制度を設けたが、ほとんど利用者がないことから、資金使途の低炭素化事業とセットにしてボンドの発行需要を刺激する形だ。

 

 新規に要求するのは「グリーンボンドや地域の資金を活用した低炭素化推進モデル事業」。予算要求書によると、「パリ協定の2℃目標の達成のために必要な投資額は巨大で、すべてを公的資金でまかなうのは現実的ではない」として、①企業や地方公共団体がグリーンボンドを発行して低炭素化事業を実施する場合②地方公共団体が地域の金融機関や地元企業らの出資によって地域低炭素推進事業体を設置する場合ーー国の補助金を配分するとしている。

 

 補助金は環境省傘下の補助事業団体が窓口となり、同団体に新たな配分事業を与える形となる。補助金の大枠は次のようだ。グリーンボンド発行体には、民間企業ならば上限5000万円+起債額の0.1%、地方公共団体は同3000万円+起債額の0.2%を提供する。たとえば、100億円のグリーンボンドを発行した民間の発行体は、最大で起債額の0.6%に相当する6000万円の補助金を手にできる。

 

 「民間資金を活用」するための制度という触れ込みだが、実際は公的資金をバラまいて、環境省版のグリーンボンドガイドラインに準拠するボンド発行者を後押しすることが目的のようにもみえる。確かに、発行コストが0.6%低くなると、補助金目当てに発行が出てくる可能性もあるかもしれない。

 

GB1キャプチャ

 

 ただ、環境省のガイドラインは、国際的なグリーンボンド原則(GBP)より緩い「二流のボンド」と国際市場からみなされている。したがって、内外の機関投資家や、金融機関などは発行された「二流のグリーンボンド」を投資対象にしづらい。発行体自体も「二流の発行体」の評判がつく可能性もある。

 

 そうなるとボンドの流動性が下がり、発行コストも上がる可能性がある。0.6%の補助金をせしめても、それ以上に発行コストが上がり、評判は下がるという事態に陥る懸念も出てくる。

 

 こうしたジレンマに陥るリスクを払しょくできないと、民間企業の制度利用は伸びないのではないか。環境省が企業と並べて、地方公共団体をグリーンボンドの発行体と位置付け、地方公共団体主導の地域低炭素化推進事業体の設置を別途掲げているのは、民間企業のボンド発行が空振りに終わった場合の補助金配分先を確保するための措置かもしれない。

 

 しかし、地方公共団体への補助事業が主体になるのならば、「民間資金の活用」の旗印は、色褪せてしまう。国の財政再建が喫緊の課題だと指摘されて久しい中で、こんな予算要求が出てくるというのが、わが国政府の不思議なところだ。

 

 また環境省はこれとは別に、今年度に「グリーンボンドの普及・取り組み支援策」として計上した7900万円の事業を、来年度も継続実施する方針で、予算額も19%増の9400万円を計上している。

 

http://www.env.go.jp/guide/budget/h30/h30juten-sesakushu/00_full.pdf