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グリーンボンド及び気候関連債券のグローバル市場規模、約10兆円(8950億㌦)に達する。債券市場全体の1%に。英CBIが今年の市場動向レポート公表(RIEF)

2017-09-22 16:47:18

 

 英非営利団体のClimate Bonds Initiative(CBI)は、グリーンボンドをはじめとする気候変動関連で発酵される債券のグローバル市場規模が、前年比29%増の8950億㌦(約10兆円)に達した、と公表した。グリーンボンドの累積発行額のほか、グリーンの認証は得ていないが、気候変動による緩和・適応事業の資金調達で発行される各国政府や国際公的金融機関等の債券総額をまとめた。

 

 CBIの調査は「2017年市場動向レポート(Bond and Climate Change, the State of the Market 2017)」。今回で6回目。今年のレポートは2005年1月~今年6月末までの間に発行されたグリーンボンド、気候関連ボンドをすべてを網羅した。対象となった債券は3493本で、発行体数は1128機関。気候関連分野は、輸送、エネルギー、マルチセクター、水資源、ビルと産業、廃棄物と環境汚染、農業と森林の7分野に分かれている。

 

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 市場規模8950億㌦は「広義のグリーン債券市場」ということができる。このうち、グリーンボンド認証を得ている債券の割合は2210億㌦で、気候関連債券市場全体の25%を占めた。2012年の段階では、グリーン認証ボンドの比率は5%だったので、5年間で認証ボンドの割合は順調に拡大したといえる。

 

 1年間の増加額2010億㌦のうち、1380億㌦は既存発行体による再発行分で、840億㌦は新規の発行体による気候関連債券。新規発行体によるグリーンボンド額は600億㌦。この合計額から、期限に達して償還された債券と、「グリーン性」に疑義のある債券合計810億㌦分を差し引いて、2017年の市場総額を算出した。

 

 現在のグローバルな債券市場規模は90兆㌦ある。気候変動関連債券市場はその1%に成長したことになる。ただ、国際エネルギー機関(IEA)の推計ではエネルギー部門に限っても、気候変動に対応するには、2035年までに累計で53兆㌦の投資が必要としており、気候関連債券市場はようやく一歩を踏み出した段階でもある。

 

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 グリーンボンド等の認証のない気候関連債券は、主に政府や公的機関等が、鉄道網の電化、電力網の整備、エネルギー関連投資など、特定のインフラ建設・整備等の政策目的を実現するために発行する場合が多い。

 

 気候関連債券の分野別では、鉄道・道路などの輸送関連事業の低炭素化向けの資金調達が最大で、全体の61%に相当する5440億㌦、次いで再エネ事業の増加によるクリーンエネルギー投資が19%の1734億㌦、マルチセクター(1120億㌦、13%)、水資源(320億㌦、3%)、建築・産業(195億㌦、2%)と続く。マルチセクターは再エネ、省エネなど多様な投資を前提にする債券で、その多くは認証付きのグリーンボンド。世界銀行などの国際公的金融機関等の発行が主体だ。

 

 気候関連債券の発行体の68%は政府、あるいは政府系の機関による。また中国政府が民間企業の信用力を補完して債券発行を促す中国鉄道会社(China Railway Corp)、やネットワーク鉄道( Network Rail)のようなケースも含まれる。

 

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  債券の平均的サイズは、発行額ベースで2億6200万㌦。1000万㌦~1億㌦台での発行数が最も多い。このレベルでの発行は自治体、企業等の発行、および途上国などが中心。平均償還期間は11.7年で、一般の債券市場の償還期間とほぼ同じ。

 

 通貨別では、中国人民元建てが全体の32%を占め、米ドル建て26%、ユーロ建て20%を上回った。人民元建て債券の大半は中国国内投資家向けで、認証付きのグリーンボンドの場合も国内ガイドラインに基づくもので、国内向けとなる。気候関連債券では中国国内の鉄道電化のための資金調達が規模も大きく、発行数も多い。

 

 認証付きのグリーンボンドへの投資家の需要は年々、高まっている。2017年で象徴的だったのがフランスのグリーンボンド国債の発行。CBIの調査によると、当初の発行額30億ユーロの予定は、200億ユーロ以上の超過応募となったことで、急きょ、発行額を70億㌦に引き上げた。

 

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 外部評価による認証付きボンドも増えている。グリーンボンドのうち外部認証付きは2015年は65%だったが、16年は77%、17年は82%と増加している。投資家の第三者評価への需要が高まっていることを示す。このうちCBIが公表しているClimate Bonds Standards(CBS)の認証を得たグリーンボンドは、15年の4%から、16年9%、17年11%と増えている。それ以外の認証はグリーンボンド原則(GBP)による。

 

 ただ、気候関連債券市場全体を見渡すと、投資適格性を保有する債券は半数以下の3890億㌦(43%)に過ぎない。投資適格性は、債券の規模(Size、2億㌦以上)、流動性(Liquidity、売り指値の有無)、流動性のある通貨建て( Currency、Barclays Global Aggregate Indexの構成通貨)の3基本要素をすべて満たしているかどうかで判定するもので、格付機関の評価対象になる。

 

 投資適格の気候関連債券の格付は、9割がBBB以上で、政府、国際公的金融機関の発行があることから、AAAが13.5%、AAが38%と過半が優良格付を付与されている。

 

https://www.climatebonds.net/files/files/CBI-SotM_2017-Bonds&ClimateChange.pdf