HOME13 原発 |原子力規制委、福島と同じ沸騰水型の東電柏崎刈羽原発を「適合」評価。東電にも"異例”の「原発運転資格あり」のお墨付き。衆院選の「自民敗北」を先取りした駆け込み画策か(各紙) |

原子力規制委、福島と同じ沸騰水型の東電柏崎刈羽原発を「適合」評価。東電にも"異例”の「原発運転資格あり」のお墨付き。衆院選の「自民敗北」を先取りした駆け込み画策か(各紙)

2017-09-28 08:00:54

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 原子力規制委員会は27日、東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)について、福島原発事故後の新規制基準に「適合」するとの審査書案を定例会合に示した。福島原発事故の当事者で、事故収束も被害者救済も果たせていない東電も「原発を運転する資格がある」と認定した。衆院選挙で「希望の党」が原発ゼロ公約を掲げたことで、自民党が敗北すると原発政策が180度転換する可能性が出てきたことで、柏崎刈羽の駆け込み承認を”原子力ムラ”が画策しているとの見方もある。

 

 原発の再稼働に向けた規制委の審査は、地震の想定や津波対策、設備設計などの妥当性を評価する。想定や対策が規制基準に適合していると規制委が判断すれば、報告書に当たる審査書案をまとめる。5人の委員全員が出席する定例会で異論が出なければ、新基準に適合すると認められる。

 

 今回、公表された審査書案は485ページに及ぶ大部な内容。まず、想定される地震の最大の揺れは1209ガル(ガルは揺れの勢いを示す加速度の単位)、津波の高さは8.3mと設定。こうした状況が発生した場合に対応するため、送電線を3系統にして停電しにくくするとしたほか、停電しても核燃料を冷やせる注水設備や冷却設備、福島原発で発生した水素爆発の防止策などを盛り込んだ。

 

 審査の過程では、東電が当初、事故対策拠点にするとしていた免震重要棟の耐震性不足が明らかになったほか、防潮堤の地盤が液状化する懸念も発覚。地盤改良や対策拠点の移設などを指摘した。規制委は、東電に申請書を総点検させ、6月に再提出させた。

 

 東電は、福島事故の経緯から、核燃料が溶け落ちて原子炉格納容器が破裂しかねない状態になった時、放射性物質を含む水蒸気の放出を避けられる新しい冷却システムの設置を盛り込んだ。規制委は、この冷却システムは、新基準で義務づけたフィルター付きベントと同等以上の効果があると評価している。

 

 審査書案の内容は、事実上の適合判断となるが、委員会としての了承は、次回10月4日以降に持ち越した。柏崎刈羽6、7号機は、福島第一と同じ沸騰水型。新基準で沸騰水型を「適合」判断するのは初めてとなり、東電の保有原発への適合も初めてとなる。

 

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 東電に原発の運転資格があるかという点について、当初、規制委は疑問視していたとされる。しかし、東電側が、文書や口頭で福島事故を収束させ、柏崎刈羽を安全第一に運営する決意を表明したため規制委が軟化した、とされる。そうした表明を信頼した根拠は何なのか、は外部にはわからないまま、田中俊一前委員長は任期(18日まで)中に、適合承認を与えようと急いだ。

 

 審査書案が了承されれば、国民から意見募集(パブリックコメント)を一カ月間実施し、年内には審査書を正式決定する見通し。しかし、立地する新潟県の米山隆一知事は「福島事故の検証には3、4年かかる」と明言しており、東電は当面、地元同意を得られず、再稼働できる状況にはない。

 

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 それでも、規制委が急きょ、東電を「信頼して」、柏崎刈羽に「ゴーサイン」を出すことを急ぐのは、なぜだろうか。想定されるのは、いささか生臭いが、安倍政権の失速で、衆院選挙では「原発ゼロ」を掲げた「希望の党」を中心とする野党連合が勝利する選択肢ができたことを、先取りした可能性が浮かぶ。

 

 「原発ゼロ」は安倍政権との対立軸として、明瞭だ。民進党が支持母体の連合の有力労組の電力労組に配慮して、原発ゼロ政策を打ち出せない中、小池百合子代表が主導する希望の党の勢いは、民進党内の対立を吹き飛ばす力がある。原発ゼロ政策は、小泉純一郎元首相や小沢一郎自由党代表らをも結集させる。小泉氏が何度も繰り返したように「原発ゼロを掲げれば選挙に勝てる」のだ。

 

 ドイツのメルケル首相のように、原発と決別できる政治家が、日本にもやっと出てきたという「期待」と「希望」。文字通り、希望の党がその決別の旗手として政治を動かす可能性が現実化してきた。

 

 「原子力ムラ」の住民たちは、早くから安倍政権の失速と、大義なき選挙突入の暴挙への不安感を示していたフシがある。そうした中で、選挙結果が出る前に、東電存亡のカギを握る柏崎刈羽原発に対する「適合」のハンコを押しておこうという計算が働いたとしてもおかしくない。規制委の委員自体、原子力ムラの一員でもあるからだ。

 

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 こうした疑念の背景には、規制委が、東電経営陣から福島の事故収束や賠償と、柏崎刈羽の安全性を両立するとの決意表明を聞いただけで、「東電に運転資格あり」と踏み込んだ判断もある。福島原発事故の責任を問う裁判が進行している中で、東電の経営を「妥当」と規制委が判断するのはどうなのか。疑念を持たれることを承知の上で、「適合」の手形の発行を急ぐ規制委の判断は、案外、「適格」に政治の変革の流れをつかんでいるのかもしれない。

 

http://digital.asahi.com/articles/ASK9W04WSK9VULBJ01W.html

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201709/CK2017092702000265.html