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世界の証券取引所の「2017年サステナビリティ情報開示ランキング」、東証は4年前の3位から今年は36位と凋落。アジアでも9番目。1位はフィンランドのヘルシンキ証取(RIEF)

2017-10-02 08:05:37

corpnight1キャプチャ

 

 世界の証券取引所の「サステナビリティ(持続可能性)情報開示度ランキング」で、2017年のトップはフィンランドのヘルシンキ証取が2年ぶりに首位に返り咲いた。北欧勢は、5位までに3証取が顔をそろえた。東京証券取引所は4年前は3位だったが年々下がり、今年は36位と急落が目立った。他の証取が上場基準でESG情報開示を厳格化しているのに対して、東証には明確な基準がなく、上場企業の開示内容が不十分な証取の代表格になっている。

 

 (上のグラフは上位10証取のデータ)

 

 調査は国連主導の 「Sustainable Stock Exchange Initiative」の一環で、仏保険会社のAVIVAが支援する形で、カナダの調査会社Corporate Knight が毎年公表している。対象とした証券取引所は世界の55証取。データはBloombergとThomson Reutersの ESGデータベース(8月1日時点)を活用した。

 

 評価は、サステナビリティの評価項目として①エネルギー使用②カーボン排出量(GHGs)③水使用④廃棄物排出量⑤従業員の事故率⑥従業員一人当たり売上率⑦人件費――の7項目を選別、これらが当該証取に上場する企業がどれ位の比率で開示しているかを評価しスコアリングした。開示評価は7項目の開示率評価(50%スコア)に加えて、2011年から15年にかけての開示率の改善度評価(20%スコア)、開示のタイムリー評価(30%スコア)の3つの視点で判断した。

 

7つのサステナビリティ項目の開示状況(先進国と途上国別)
 7つのサステナビリティ項目の開示状況(先進国と途上国別)青が先進国、赤は途上国。

 

 対象55証取全体で、情報開示の度合いをチェックした上場企業は世界中の6441社に上った。このうち、7項目の情報開示度では、人件費が78%ともっとも高く、以下、GHG(43%)、使用エネルギー量(40%)、水使用(38%)、廃棄物(29%)、事故率(24%)、従業員売上率(15%)の順だった。

 

 過去5年間の企業の開示状況をみると、GHGの情報開示の改善率は年率5.1%と低く、エネルギー量、廃棄物、事故率もほぼ同様だった。これに対して、水使用と従業員関連の情報開示は、平均して10%ほどの改善率アップになっている。

 

 「世界産業分類基準(Global Industry Classification Standard)」に基づく産業ごとのGHG開示状況が不十分な企業割合は、エネルギー産業が先進国で52%、途上国で62%、素材産業が先進国31%、途上国71%、その他産業は先進国49%、途上国80%、電力など公益事業が先進国31%、途上国68%などと、途上国企業の開示度合いの低さが目立つ。同時に、先進国企業もまだかなりの比率で情報開示の不十分な企業があることもわかる。

開示レベルが低いグループに入った東証。
    開示レベルが低いグループに入った東証。

 

 証取別では、ヘルシンキ証取が84.9%という高いスコアで1位に返り咲いた。同証取は、2014、15と1位だったが、昨年は7位に順位を落としていた。2位はスウェーデンのストックフォルム証取(前年4位)、3位はフランスのEuronext Paris(2位)、4位英ロンドン証取(8位)、5位ノルウェーのオスロ証取(14位)111位のオランダのEuronext Amsterdamは6位に下げた。

 

 東証は「落第グループ」の次の「情報開示レベルが低いグループ」に位置する。東証が目立つのは、2013年は3位という輝かしいポジションにいながら、14年(12位)、13年(21位)、16年(28位)、そして今年は36位と、一環して順位を大きく下げている点だ。今回の報告書も、東証と、メキシコ証取、サンチアゴ証取(チリ)の3証取を特に明記して、情報開示内容の不十分さと開示スピードの遅さを指摘している。

 

 全体的にサステナビリティ情報開示の評価が高いのは欧州の証取だ。EUが非財務情報開示指令を出すなど、標準的な情報開示を義務化する方向にあることから、各証取の取り組みも本気度が高まっている。また国連主導のSustainable Stock Exchange Initiativeに参加しているアジア、アフリカなどの証取も、サステナビリティ情報開示を市場標準として整備している。

 

 アジアの中でも、タイ証取が10位(前年13位)とベストテンに入ったほか、台湾証取は前年の30位から11位へと大躍進した。シンガポール証取16位、香港証取24位、インドネシア証取25位、上海証取27位、フィリピン証取29位、韓国証取32位と続き、東証はアジアでも9番目の位置に過ぎない。東証は世界だけでなく、アジアでもサステナビリティ情報開示では「劣後証取」の位置に甘んじているわけだ。このままだと、来年は「落第グループ」にまで下がる可能性がある。

 

 最近、日本でも、株式、債券投資においてESG投資が持てはやされつつある。だが、対象となる上場企業のESG、サステナビリティ情報の「質」は、今回の報告でも指摘されたように、国際的にみてかなりのレベルの低さにあるといえる。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がESG指数連動の運用を打ち出すなどしているが、投資先企業の情報開示の質が低い中で、効率的なESG運用を実践できるのかという課題を抱えている。

http://www.corporateknights.com/reports/2017-world-stock-exchanges/