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風力発電の変動を水素で吸収、熱エネルギーに転換。NEDOが豊田通商、NTTファシリティーズなどと、北海道で「Power to Gas」の実証事業展開へ(RIEF)

2017-10-05 20:25:23

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  風力発電の電力の一部を水素に転換し、発電エネルギーの効率的利用を図る取り組みが北海道で始まる。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が豊田通商、NTTファシリティーズ、川崎重工業、フレイン・エナジー、テクノバ、室蘭工業大学と連携し、11月下旬から北海道苫前町の町営風力発電所で水素エネルギーのPower to Gas実証事業を開始する。

 

写真は、実証現場となる北海道苫前町の夕陽ヶ丘ウインドファーム・風来望)

 

 風力発電は普及が進むが、気象条件の変動によって、発電量も変動するという課題を抱えている。太陽光発電も同様だ。こうした再生可能エネルギーの課題を克服するため、再エネ発電の電力(Power)を水素(Gas)に転換し、安定した熱エネルギーとして利用しようというのがPower to Gasの考え方だ。

 

 水素は、使用時に二酸化炭素(CO2)を排出しないうえに、電気や熱など多様な利用方法が可能。このため、将来の二次エネルギーとして期待が高まっている。ただ、水素の製造段階での低CO2化が課題となっている。そこで再エネ発電の余剰電力で低CO2の水素を製造することで、再エネ発電の効率化と水素製造の低炭素化を同時に実現しようという狙いだ。

 

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 実証事業は風力発電のポテンシャルが高い北海道苫前町にある町営の風力発電施設、「夕陽ヶ丘ウインドファーム・風来望」で行う。設備では、NTTファシリティーズが開発した風力発電量予測システムで翌日の風況・発電量を予測する。その情報をもとに、川崎重工業の制御システムを用いて安定的に供給できる電力量(安定電力)と水素製造に用いる不安定電力を計算し、同社開発の水電解装置を用いて水素を製造する。

 

 次に、製造した水素を、フレイン・エナジーが開発した水素添加装置を使いトルエンと反応させ、MCH(メチルシクロヘキサン)を生成し、需要先に陸上輸送で配送する。到着した需要地で同社開発の脱水素装置によりMCHを水素とトルエンに分離して戻し、その水素とLPGを混焼ボイラーで熱利用する、という流れになる。

 

 豊田通商は実証実験の代表企業として、テクノバとともに、事業性の分析や将来のビジネスプラン策定などを担当する。室蘭工業大学はフレイン・エナジーとともに脱水素装置の性能を向上させるための脱水素触媒の開発に取り組む。

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 実証事業に参加する各社は、2015年2月から同事業の取り組みを続けてきた。これまでに、ビジネスモデルの設定や実証試験の計画立案、各設備の設計・製作および試運転を通した各設備の性能検証を進めている。

 今回の実証で検証するのは、①風力発電量を予測するシステムの予測精度と、売電する電力量と水素製造に使う電力量の最適配分を測る制御システム②変動の大きな風力発電電力に対する水電解装置の性能③水素輸送のために別の物質に変換する装置(水素添加装置)や、再び水素に戻す装置(脱水素装置)の性能④実証モデルの経済性ーーなど。

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