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神戸製鋼、また不祥事。品質基準の検査データを改ざん。10年間も継続の可能性。CSRでの『3つの約束』『6つの誓い』も絵空事だった(RIEF)

2017-10-10 00:17:50

kobeseiko1キャプチャ

 

    神戸製鋼所は8日、製品が取引先企業の求める品質基準を満たしていないのに、検査データを書き換えて「適合」を装っていたと発表した。適合を偽装していたのはアルミ・銅製品の約4%に相当し、供給先は三菱重工業やトヨタ自動車など約200社に及ぶ。管理職も関わった組織ぐるみの不正だ。同社はCSR(企業の社会的責任)で「信頼される技術、製品、 サービスを提供する」など『3つの約束』を掲げるが、”カラの約束”だったことになる。

 

 検査データを改ざんしていたのは、同社グループの長府製造所(山口県下関市)や真岡製造所(栃木県真岡市)、大安工場(三重県いなべ市)などの4事業所。昨年9月から今年8月末までの調査の結果、対象製品は、アルミ板、アルミ押出品、銅板条、銅管及びアルミ鋳鍛造品にわたり、アルミ製品(板、押出品)約19,300t、銅製品(板条、管)約 2,200t、アルミ鋳鍛造品約19,400個について、強度や寸法などのデータを偽装していたという。

 

 不正はこの1年だけでなく、過去10年にさかのぼった調査でも一部で改ざんが見つかっており、長期間にわたって組織ぐるみで行われていたとみられる。

 

 同日、記者会見した梅原尚人副社長は「深くおわび申し上げる」と謝罪したしたうえで、「不適合部品の安全性に疑いがある問題は現時点で起きていない」と釈明した。説明によると、今回の改ざんは顧客との間で定めた品質データの改ざんで、法令や日本工業規格(JIS)違反ではない、としている。

 

神戸製鋼の川崎博也社長
神戸製鋼の川崎博也社長

 

 しかし、取引先企業の仕様に沿った品質基準に適合していない製品を供給しながら、それを長年にわたって企業側にも隠していたことは、取引先からの信頼を悪用したことになり、企業道徳として最悪だ。取引先企業は、神戸製鋼の製品を使った自社製品の安全性問題に直面することは避けられない。取引先には、国産ジェット旅客機「MRJ」を開発中の三菱重工業子会社、新幹線を走行するJR東海、乗用車の各部材に採用するトヨタ自動車、スバル、マツダなど、多くの大企業が含まれている。

 

 神戸製鋼では、これまでも再三にわたって不祥事・不正が発覚している。1999年には、総会屋への利益供与で元役員らが金銭提供などの商法違反で、有罪判決を受けた。専務ら3人と、利益供与当時の会長だった亀高素吉相談役が辞任している。



 2006年には、神戸、加古川両製鉄所で環境基準を超える窒素酸化物などを含むばい煙を排出しながら、測定データを改ざんしていた不正が発覚。排ガスの基準値が超えそうになると、担当者が自動記録装置の記録ペンを手で浮かせて印字できないようにするなど悪質で組織的な手口が露呈した。



 09年には、今回の検査データ改ざん事件を起こした長府製造所(山口県下関市)で、地方議員の後援会に政治資金規正法が禁じている寄付をしていたことが発覚、当時の犬伏泰夫社長と水越浩士会長が辞任した。昨年も、グループの神鋼鋼線工業(尼崎市)の子会社で、JIS規格を満たしているように試験値を改ざんした問題が見つかった。

 

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 今回のアルミ・銅製品の検査データ改ざん事件は、少なくとも10年は続いていたとされ、過去の複数の不祥事・不正が発覚した際にも、アルミ・銅部門での改ざんの作業は是正されずに、継続されていたことになる。一般的には、不祥事が発覚した企業は、再発防止のため、全社的な見直しや改革に取り組むが、同社の場合、表面的にはそうした改革を装いながら、「バレていない」部門では不正が「持続可能」になっていたことになる。

 

 川崎博也社長は、不祥事体質からの脱却を目指して、今年5月、従来の企業理念を、社会に対する約束事として『3つの約束』に言い換えるとともに、それを実現するための行動規範として『KOBELCOの6つの誓い』を打ち出し、組織改革を宣言していた。

 

 6つの誓いは①高い倫理観とプロ意識の徹底②優れた製品・サービスの提供③働きやすい職場環境の実現④地域社会との共生⑤環境への貢献⑥ステークホルダーの尊重ーーからなる。

 

 しかし、今回の組織ぐるみのデータ改ざんは、①②を否定するとともに、③の職場が不正の温床になっていたことを示す。また取引先が求める品質の仕様を欺いたという意味では、⑥も傷つけた。この問題とは別に、同社は神戸製鉄所(神戸市灘区)で石炭火力発電所を増設する計画を進めているが、地域住民から「温暖化対策に逆行する」と強い反発を受けている。その点で、④⑤についても疑問が示されている。http://rief-jp.org/ct4/71654

 

頭を下げる梅原尚人副社長(右)
頭を下げる梅原尚人副社長(右)

 

 これだけ、取引先企業にも、地域社会にも、環境に対しても、改ざんや不具合を押し付ける企業は、今時、珍しいかもしれない。さらに、この期に及んでも、同社が地域社会や環境、投資家などを重視する気がないことも指摘されている。8月末に各現場での改ざん実態を把握していながら、取引先との調整や経済産業省への報告などを最優先し、外部への公表を後回しにした点だ。

 

 同社は、安倍晋三首相が、若いころに勤務していたことでも知られる。しかし、政界とのつながりや、官庁との関係を最重視する旧来型の社風を改めない限り、社会との「約束」も「誓い」も果たせない。企業としての持続可能性はすでにかなり危うくなっていると言わざるを得ない。

 

http://www.kobelco.co.jp/releases/1197805_15541.html

http://www.kobelco.co.jp/about_kobelco/csr/kaiji/report/2017/files/2017csr_report.pdf