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福島地裁、東電福島原発事故で、「国は巨大津波を十分予見できた」と、国の責任を認定、賠償命じる。3800人訴訟(各紙)

2017-10-10 16:03:05

fukushimachisai1キャプチャ

 

 各紙の報道によると、福島地方裁判所の金沢秀樹裁判長はは10日、東京電力福島第一原子力発電所事故で、福島県内外の住民約3800人が国と東電に損害賠償を求めた集団訴訟で、「国は巨大津波を予見することが可能だった。東電に対策を命じていれば事故を回避できた」として国の賠償責任を認めた。原告のうち約2900人に総額4億9000万円余を支払うよう東電と国に命じた。

 

 賠償額のうち国の分担は半分の2億5000万円余とした。全国約30件の同種訴訟で国の賠償責任を認めたのは3月の前橋地裁判決に次いで2件目。ただ、先月の千葉地裁判決は「国が東電に対策を取らせても事故を防げなかった可能性がある」として国の責任を認めなかった。今回は原告数が最大規模で国の責任をどちらに認定するかが注目されていた。

 

 判決は、政府機関が2002年にまとめた長期評価やその後の東電の津波の試算によって国が巨大津波の可能性を予見できたと判断。「非常用電源の高所配置などの対策を東電に命じれば事故は防げた」と述べた。

 

 国は「津波は予見できず、東電に津波対策を命じる権限もなかった」と主張したが、判決は規制権限を行使しなかった国の対応を「著しく合理性を欠く」と結論づけた。一方で「安全確保の責任は一次的には東京電力にあり、国の責任の範囲は半分にとどまる」として、国の賠償額は半分とした。

 

 原告側によると、福島地裁に訴えを起こしたのは福島県内59市町村と隣県の宮城、茨城、栃木の住民。国の指針に基づく東電の賠償額は低すぎるとして、生まれ育った故郷を失ったことへの慰謝料などを求めた。賠償請求額のうち、住んでいる地域の放射線量を事故前の水準に戻す「原状回復」については、退けられた。

 

 原子力規制庁の大熊一寛総務課長は「国の主張について裁判所の十分な理解が得られなかったと承知している。原子力規制委員会としては原発事故を踏まえて作られた新たな規制基準の審査を厳格に進めることで、適切な規制を行っていきたい」と述べた。