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CDPの最新レポート、社内カーボン価格制度導入企業、世界で11%増1389社。日本は24%増129社。国の排出権取引制度がなくとも、東京都制度とグローバル対応で順調に拡大(RIEF)

2017-10-16 08:00:27

CDP5キャプチャ

 

   英国の気候変動NGOのCDPは最新のレポートで、温暖化リスクを企業内で費用化する社内カーボン価格制度を導入しているか、あるいは2年以内に導入予定の企業が前年より11%増え、1389社に達した、と公表した。日本企業は平均の倍以上の24%増の129社。日本は国レベルの取引制度はいまだに導入されていないが、東京都の排出量取引制度のほか、グローバル企業はEUの取引制度(EU-ETS)等などへの対応を迫られているためとみられる。

 

 CDPのレポートは「Integrating climate risk: Disclosure and carbon pricing. A new normal?」のタイトル。CDPの温暖化アンケート活動に参加する企業など、世界の6018社を対象に、カーボン価格制度導入状況を調べた。対象企業の総資産は100兆㌦を超える。

 

 その結果、フォーチュングローバル500にランクされている100社以上の企業を含め、1389社のグローバル企業が社内カーボン価格制度の導入ないし導入予定と回答した。昨年は1249社だった。ただ、伸び率の11%は、前年の23%より下回った。制度導入企業の年間総収入は約7兆㌦。1389社のうち、すでに導入企業は607社、今度導入予定が782社。いずれも前年より増えている。

 

CDP2キャプチャ

 

  ただ、調査対象企業の56%と過半の3376社は導入の考えを示していない。これらのうち約800社は、本社所在地や活動領域において、将来の取引制度やカーボン税の導入などの政策変更によるカーボンリスクを抱えている、とCDPは指摘している。

 

 また約500社はEU-ETSなどの義務的制度の対象になっているか、中国企業やカナダ企業などのように、今後2年以内に対象になる、と回答した。しかし、これらの企業の多くは、社内カーボン価格制度を導入しておらず、CDPは「カーボンコストをビジネスに取り入れておらず、規制の影響に対して潜在的な脆弱性を抱えている」と警告した。

 

 産業別では、電気・ガス等の公益事業(ユーティリティ)で導入企業が84%、エネルギー事業で79%と、両事業では大半が導入済み。続いて素材45%、日常用消費財29%などとなっている。高排出産業の対応が目立っている。

 

CDP3キャプチャ

 

 地域別では、東アジアの日本、中国、韓国の3カ国での制度導入の動きが急成長している。日本は国レベルの排出権取引制度を導入できなていないが、東京都、埼玉県での地域レベルの制度が定着している。韓国は2015年に導入した取引制度を今年から本格化させた。中国は7つの地域で実施してきたパイロット取引事業を、今年中にも全国展開する予定。各国とも取引制度の存在が企業の取り組みを後押しする形となっている。

 

 東アジア3カ国で社内カーボン価格制度を取り入れた企業数は、前年の170社から281社と65%増となった。このうち、中国企業は102社で、2015年の54社から倍増している。明らかに全国版の排出権取引制度へ備える企業が増えている。CDPに回答した中国企業のうち46%は、全国版排出権取引制度の対象になると、答えている。

 

 日本の制度導入企業は129社と順調に増えた。大半の企業が東京都の排出量取引制度の対象になっているほか、14社はEU-ETSへの対応も制度導入の理由にあげている。日本政府は、国レベルのカーボン価格化政策を検討しているが、環境省は排出権取引制度よりもカーボン税を目指している。CDPは日本の社会カーボン価格制度の伸びが今後どうなるかは不確実、とした。韓国の社内価格制度導入企業は50社。大半は、国の排出権取引制度の対象になっている。

 

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