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環境省、独自のグリーンボンドガイドラインのモデル事業が1件しかなく、二次募集へ。民間発行体は「二流ボンド」の烙印を嫌う。予算の無駄遣い鮮明に(RIEF)

2017-10-18 23:01:23

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 環境省は、今春に公表した同省独自の「グリーンボンドガイドライン」の普及のためのモデル事業がこれまでのところ、公益事業体による1件しかなく、このままでは予算を消化できなくなる可能性が高いことから、急きょ、二次募集に踏み切った。同ガイドラインは国際的な基準であるグリーンボンド原則(GBP)に比べて緩く、発行体は「モデル」どころか「二流」の烙印を押される懸念があり、敬遠するところが増えている。

 

 環境省はGBPの基準を満たさなくても、国内市場だけを対象とした「グリーンボンド」の発行を支援するとして、日本独自のガイドラインを設定した。今年度予算では、それを普及させるため7900万円の予算を確保している。

 

 ところが、これまで同ガイドラインに基づくモデル事業に採択されたのは、鉄道建設の公益事業体である独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(JRTT)の「神奈川東部方面線」(相鉄・JR直通線及び相鉄・東急直通線)の建設資金調達のための債券発行だけ。

 

 JRTTは公益事業体としてこれまでも定期発行してきた債券の一部を、環境省の補助金付き債券に切り替えた、というのが実態だ。資金使途等は従前から決まっていた事業でもある。それで民間企業のグリーンボンドのモデルになるかといえば、かなり無理がある、と言わざるを得ない。

 

 にもかかわらず、環境省がモデル事業の二次募集に踏み切るのは、同省の”事情”があるようだ。同省は来年度予算では、今年度の予算額より19%増の9400万円を計上したうえで、ガイドラインを活用してグリーンボンドを発行体する事業体に、補助金を配分する「低炭素化モデル推進事業費」として新たに20億円をバラまく要求をしている。

 

 こうした”誇大な”予算要求を財務省に突き付けた手前、少なくとも今年度のモデル事業に一定の成果がないと、予算交渉もできない。そこで何としても今年度予算を消化したいと、モデル発行の二次公募を目指すことになったとみられる。

 

 最近になって、みずほ、三井住友の両フィナンシャルグループがグリーンボンドを相次いで発行した。両グループとも、環境省にも配慮してか、基準は「GBPと環境省のガイドラインの両方を満たす」と説明している。だが、グローバル基準のGBPを満たせば、当然、それより緩い国内基準も満たすのは当たり前で、環境省ガイドラインは不要、ということを再確認したようなものだ。

 

 200億円のグリーンボンド発行を近く予定している東京都の場合も、おそらく同様の環境省配慮の説明を付け加えるとみられる。海外の投資家に通用しない「国内だけの緩い基準」に基づくボンド発行を「モデル」として推奨されても、発行体にとってはレピュテーション低下リスクのほうが大きいといえる。

 

 そうした市場の反応を想定してか、環境省のモデル事業の二次募集では、民間企業よりも、国内の独立行政法人、地方公共団体その他の公的機関を前面に据えて、応募を呼びかけている。しかし、その場合は「官の世界」での資金循環を増やす政策となり、改めて税金を補助金として配分する意味があるのか、との疑問もでてくる。

http://www.env.go.jp/press/104687.html