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環境省 神戸製鋼の検査データ改ざん問題で、同社が神戸市に計画する石炭火力発電所の測定データにも不正がないか検証を指示。すでに住民団体は複数の不備を指摘済み(RIEF)

2017-10-23 10:20:57

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  各紙の報道によると、環境省は神戸製鋼所が神戸市で建設を計画している石炭火力発電所について、同社が作成した環境影響評価準備書の測定データなどに改ざんがないかどうか、検証するよう求めたことを明らかにした。同社が広範な検査データの改ざんを長年にわたって続けていたことが明るみに出たことを受けた対応という。

写真は、神戸市の市街地に隣接して石炭火力建設計画がある神戸製鋼神戸製鉄所の跡地)

 神戸製鋼の計画では、神戸市灘区の同社の高炉設備を休止した跡地に、65万kWの発電能力を持つ石炭火力を2基建設し、2021年から稼働する方針。しかし住民団体らは、発電所が住宅地から 400m の至近に、既存のものも含めると、合計 270 万 kW の石炭火力が汚染物質を排出することになり、こうした石炭火力の集中度は「国内・海外でも例をみない」と反対運動を展開している。http://rief-jp.org/ct8/54248

 

 これまで住民団体らは、神戸製鋼が作成した環境影響評価準備書について、評価の基本となるバックグラウンド濃度の算定で、従来の高炉設備による環境への寄与度を差し引いたバックグラウンド濃度を示すべきなのに、そうせず、高いバックグラウンド値をベースに影響評価を示して「発電所の影響を恣意的に低く見せている」とデータの不備を指摘している。http://rief-jp.org/ct4/71654

 

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 神戸製鋼は住民への説明会などでも、窒素酸化物等の大気汚染物質は発電所を設置しても、高炉からの排出に比べて将来、濃度が低下するなどの説明している。この点についても、住民団体側は、「高炉の稼働率を100%と過大に評価して、汚染物質排出量を試算しており、数字のトリックを使っている」と、同社の”不誠実さ”を批判してきた。

 

 さらに、PM2.5についても環境影響評価を行わず、環境保全措置も講じていない。石炭燃焼に伴って排出される水銀などの重金属物質の排出についても、排出総量を明らかにせず、住民団体らは予測結果を過小に評価していると、批判してきた。

 

 これ等の指摘は、今回の神戸製鋼の検査データ改ざん発覚事件の前に、同社が測定データを恣意的に扱っていることを検証・指摘したものだが、環境省はこれまでこうした住民団体側の指摘について明確な姿勢を示さないままだった。神戸製鋼はこの準備書を7月に経済産業相へ提出済みで、これを兵庫県が審査し、経産相へ意見書を出す手続きをしていて、環境省も同じ手続きをとって認める方針だったとされる。

 

 しかし、神戸製鋼のデータ改ざん問題が同社の広範な製品や工場等の測定データに及んでいることがわかったことから、準備書の不備についても不問にするわけにはいかなくなったと判断したとみられる。中川雅治環境相は、先週20日の記者会見で、神戸製鋼に対して環境影響評価の測定データなどに改ざんがないか検証するよう求めたことを明らかにした。結果次第では計画自体に影響が及ぶ可能性もある。

 

 兵庫県もすでに開催予定だった審査部会と公聴会を延期を決めており、準備書の数値データの検証を行う方針を示している。環境省と経済産業省は同社に対して、データを独自に検証して報告すると共に、県の検証作業に協力するよう求めた。中川環境相は「データの信ぴょう性について説明が求められる。経産省や県と連携し、検証作業を注視したい」と語ったという。https://mainichi.jp/articles/20171021/k00/00m/040/064000c