HOME8.温暖化・気候変動 |ニュージーランド新連立政権のジャシンタ・アーダーン首相。2050年にネット・ゼロ・カーボンを国家目標に。英国型の法制と独立気候委員会設置。排出権取引も強化(RIEF) |

ニュージーランド新連立政権のジャシンタ・アーダーン首相。2050年にネット・ゼロ・カーボンを国家目標に。英国型の法制と独立気候委員会設置。排出権取引も強化(RIEF)

2017-10-23 21:36:33

 

   ニュージーランドの新たな連立政権で首相に就任した労働党のジャシンタ・アーダーン首相は、今世紀半ばの2050年までに同国でゼロ・カーボンを実現するとの目標を掲げた。目標実現のために、「ゼロ・カーボン法」を制定するとともに、全産業、全ガスを対象とした排出権取引制度の導入を目指すとしている。

 

 ニュージーランドは9月23日の総選挙で、与党国民党が第一党になった。だが、過半数に届かず、第二党の労働党がポピュリスト政党のニュージーランド(NZ)・ファースト党と連立政権を組み、9年ぶりの政権交代が実現した。連立政権の首相となったアーダーン氏は37歳で、8月に党首に就任したばかり。同氏の登場で低迷していた労働党人気は急上昇し、一気に首相に昇りつめた。同氏は、世界でも過去最も若い女性首相になった。

 

 アーダーン氏は、連立政権の政策として気候変動対策を最優先課題に掲げると言明した。同政策はNZファースト党も同意しているほか、議会で協力を約束しているグリーン党も支持している。グリーンはすでに独自に2050年カーボン・ネットゼロ目標を提唱している。

 

NZ1キャプチャ

 

 アーダーン氏は「ゼロカーボン法とともに、独立した気候委員会(Climate Commission)を設立し、排出権取引制度も強化する。すでに3党は合意している」と述べた。ゼロカーボン目標を達成するために法律を制定し、それをチェックする第三者委員会を設けるというプロセスは、英国のClimate Change Actと同法に基づく気候変動委員会をモデルとしている。

 

 

 「2050年ゼロ・カーボン」を政策として掲げることは、今後の国際温暖化交渉において同国がリーダーシップの役割を果たすことを意味する。現在、「ゼロ・カーボン」を国家目標に掲げている国は、スウェーデン(2045年ネットゼロ)、ノルウェー(2030年カーボン・ニュートラル)が有名。

 

 だが、両国とも目標達成のため、国際カーボンクレジットや海外での植林によるオフセットクレジットを前提としている。またカナダ、英国、ドイツ、フランス、メキシコ、EUなどは今世紀半ばまでにカーボン排出量の大幅削減を目指している。しかし、ネット・ゼロではない。

 

 これに対して、ニュージーランドは国内でのネット・ゼロを目指す。同国ではすでに排出権取引制度を導入しており、森林による吸収源が大きな削減力になっている。これに加えて新政権は農業分野にも排出権取引の網をかける予定。ただ、農業事業者からの反対が強く、今後の調整がカギとなる。

 

 選挙戦中、アーダーン氏は、気候変動対策は「世代的課題」と強調した。同国は1980年代に「非核地帯(nuclear-free zone)」を宣言、法律も整備し、世界の世論をリードした。同様に、現在、世界で求められている「気候変動フリー」の政策を率先して採用することで、温暖化対策を推進していこうという発想だ。数合わせを優先する日本の政治家とは、基本的に政治家としての発想力と行動力が違うようだ。

http://www.climatechangenews.com/2017/10/20/jacinda-ardern-commits-new-zealand-zero-carbon-2050/