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環境省。太陽光発電事業による地方の防災拠点づくりで、蓄電池併設なしの「使えない拠点」が12市町村45系統。地球温暖化対策税の補助金約1億4400万円がムダに。会計検査院が指摘(RIEF)

2017-10-29 15:26:59

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   会計検査院は、環境省が地方自治体の防災拠点づくりで整備した太陽光発電事業のうち、青森、秋田、栃木などの12の自治体での45系統の設備が蓄電設備を併設していないおらず、災害などの停電時に機能しない状態であると指摘、同省に改善を指示した。1億4448万円の補助金が「使えない事業」に投じられていたことになる。検査院は、環境省が補助金を出す際に設備の設計指示を的確にしていなかった、と指摘している。

 

写真は、三重県南牟婁郡紀宝町の生涯学習センターに設置された太陽光発電設備。一部は蓄電池が併設されていないため、災害時に機能せず)

 

 問題になった環境省の防災拠点づくりの補助金は、東電福島原発事故での電力需給のひっ迫への対応の必要性を受け、2011年度から14年度の間、再生可能エネルギー等の地域資源を活用して災害に強い自立・分散型エネ ルギーシステムの導入支援を目的として、各都道府県及び政令指定 都市に、温暖化対策税による補助金を配分した。また15年度は一般財団法人環境イノベーション情報機構を介在させる形で資金配分をした。

 

 整備事業の柱は、発電用の太陽光パネルの設置と、変換装置のパワーコンディショナーの導入。ただ、太陽光発電は夜間には発電できず、災害時には太陽光発電だけでは不安定なことから、蓄電池の併設が必要となる。ところが、検査院が調査対象とした同整備事業を実施した275府県市町村などのうち、12県市町村などで、蓄電池が併設されていないことがわかった。

 

 蓄電池併設ではない事業が見つかったのは、青森、秋田、栃木、和歌山、高知の各県と、環境イ ノベーション情報機構が補助金を投じた三重県の事業。このうち、栃木では栃木県自体が事業主となっていた。また秋田県の秋田空港ターミナルビルも含まれている。

 

 たとえば、環境省が2015年度に三重県南牟婁郡紀宝町に支給した補助金は、同町の生涯学習センターの建物に、太陽光発電設備などを整備する事業費6,469万2,000円の全額を、環境イノベーション情報機構から交付を受けた。同町は太陽光パネル計168枚(太陽光パネル発電量計40.3kW)を整備し、太陽光パネルからの電力の供給では、4系統とする設計とした。しかし3系統は蓄電池設備などを整備したが残りの1系統には、蓄電池設備を設けなかった。

 

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 検査院はこうした事態を引き起こした原因として、①自治体側に、災害等に電力を安定的に供給するために蓄電池設備等が必要であるとの認識が欠けている②環境省が、蓄電池設備整備の必要性を制度設計に際して自治体側に留意点等として示さなかったーーと指摘している。補助金をもらう側、補助金をだす側が、安易に対応していた、ということだ。

 

 補助金の原資となる地球温暖化対策税は、石油・天然ガス・石炭などの化石燃料の利用に対して課税して徴収している。平均的な世帯の負担割合は年間約1200円と見込まれる。年間2623億円の税収は、温暖化対策の施策として、今回のように補助金等として配分されている。

 

 会計検査院は10月24日付けで、環境大臣に対して、問題のあった12県市町村などの該当する太陽光発電設備に対し、蓄電池設備を整備するなどの必要な措置を講じさせ、設備の設計に必要な留意点などを自治体に周知徹底するようを求めた。

 

http://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/29/h291024_03.html