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日本のサステナブル投資残高、前年比2.42倍の136兆円余に急増。ただし、大半が「議決権行使・エンゲージメント」で企業選別方式は限定的。NPOのJSIF調査(RIEF)

2017-11-02 17:58:23

JSIF4キャプチャ

 

 NPO法人の「日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)」は、機関投資家や資産運用機関を対象とした「第3回サステナブル投資残高アンケート調査」結果を公表した。それによると国内の対象機関の投資合計額は、前年比2.42倍の136兆5959億円に達した。ESG投資に注目が集まる中での急増となった。ただ、大半は「議決権行使・エンゲージメント」で占められ、サステナブルの視点で投資先を選別する方式の投資に絞ると、約3分の1に減少する。

 

 JSIFによると、調査は今年9月1日~29日にかけて実施した。対象機関は国内に拠点を持つ34機関を選び、そのうち32機関から回答を得た。このうち資産保有機関は8社にとどまり、年金は2機関。国連の責任投資原則(PRI)の署名機関は28で、資産保有・資産運用全署名機関48機関の6割弱だった。

 

 回答機関は若干入れ替わっているとのことだが、前年のアンケートで総額が56兆3000億円だったのが、一気に2.42倍になったのは急増に間違いない。総額だけでなく、回答機関の総運用資産に占める比率も、16.8%から35.0%に、1機関平均の残高は1.8兆円から4.3兆円に、それぞれ増加している。

 

 JSIF2キャプチャ

 

 運用手法ごとの投資残高では、「議決権行使・エンゲージメント」がもっとも多く143兆451億39oo万円と、総額を上回っている。これは「議決権」「エンゲージメント」を分けて質問し、回答は合算したためという。複数回答の中からこの両項目を同額回答した金額が36兆円あり、これらを差し引くと約107兆円となる。それでも、総額の約8割を占め、この項目が全体のサステナブル投資規模を引き上げていることがわかる。

 

 運用手法別で次に多いのが、「ESGインテグレーション」の42兆9661億円。JSIFでは同手法について「通常の運用プロセスにESG要因を体系的に組み込んだ投資」と定義付けている。従来の投資運用判断にESG項目を追加したものといえ、「議決権行使・エンゲージメント」と同様、もっとも取り組みやすい方法である。

 

 JSIF自体も、1年間での急増について、ESGインテグレーションとエンゲージメントについては、「全体として取り組みが広がったことによる増加」と位置づけ、その他についても、複数回答可としたことによる増加が影響していることを認めている。

 

JSIF1キャプチャ

 

  サステナブル投資やESG投資については、欧米でも分類によって数値が大きく異なるケースがある。基本的に欧米の場合は、投資対象銘柄を一定の選別基準を設けて選別する(スクリーニング)方式が中心とされる。特に多いのが、武器やアルコール、化石燃料等の特定の産業・事業を対象外とするネガティブスクリーニング。

 

  SIFのデータのうち、こうしたスクリーニング方式の残高を合計すると46兆6695億円で、総額の約3分の1となる。上記のようにこれらのスクリーニング方式も複数回答が混在していることから、実際の選別方式の投資額はもっと少ないことになる。運用手法として複数の方式を組み合わせるのは実務上、当然のことだが、複数回答をとのまま合算すると、統計的な実態をつかみづらくなる。

 

 一方で、個人向けのSRIファンドなどの残高は、今年3月末時点で7358億円(投資信託2187億円、債券5171億円)。前年とほぼ変わらず、横ばいを続けている。

http://japansif.com/171030.pdf