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経団連、企業行動憲章を7年ぶり改定。SDGsの達成を柱に、「人権尊重」を新たに原則化(RIEF)

2017-11-09 14:03:42

sakakibaraキャプチャ

 

 日本経済団体連合会は8日、7年ぶりに企業行動憲章を改定した。国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成を柱として、人権をはじめ、ESG(環境、社会、ガバナンス)に配慮した経営の推進によって、社会的責任への取り組みを進める、としている。

 

 企業行動憲章は1991年に制定され、大幅な改定は今回で5回目。改定の主なポイントは、まず、サブタイトルを「持続可能な社会の実現のために」とし、第1原則に「イノベーションを発揮して、持続可能な経済成長と社会的課題の解決を図ること」を追加した。これはSDGsの9番目の目標と整合する。

 

 さらに、第4原則として、「人権の尊重」を新たに追加した(SDGs10目標)。「すべての人々の人権を尊重する経営を行う」と記した。また「働き方の改革の実現」についても、第6原則で表現を明確にした(SDGs8目標)。

 

 多様化、複雑化する脅威に対する危機管理への対応を第9条(SDGs16目標)で、行動憲章の対象を自社・グループ企業に加えて、サプライチェーンにも拡大して行動変革を促すことを第10目標(SDGs17目標)で、それぞれ明確化した。

 

 特に、「人権の尊重」を原則の一つに加えたことは、SDGsを踏まえると当然だが、それだけではないだろう。人権配慮が経営の根幹に関わる重要問題として改めてとらえられた背景には、日本の産業界の現状の課題が色濃くある。日本企業が途上国市場へ進出することは生き残りをかけた当然の選択肢だが、進出国での下請け工場の労働管理や人権問題等への管理能力が不十分な企業が少なくない。

 

 国内市場でも、電通やNHKなどで従業員の長時間労働、過労自殺などの問題が相次いでいる。国内下請け工場で働く外国人技能実習生の強制労働問題などは明快な解決法がないまま、尾を引いている。

 

 一方、国際的には、ビジネスと人権問題への対応が急展開で進んでいる。2011年には国連で「ビジネスと人権に関する指導原則」が採択されたほか、英国では15年に、同国で事業を行う企業に対しサプライチェーン上の人権リスクの調査と報告を求める「現代奴隷法」が施行された。

 

 日本企業での長時間労働や過労自殺は、まさに英国法が問題視する「現代版奴隷」行動の事例でもある。他の欧州諸国でも英国と同様の法律が整備されており、先進国の中で、日本の人権対応の遅れが際立つ形にもなっている。経団連の憲章で、人権尊重の企業風土が、日本社会で構築されるのか、そうならない場合は、法規制の必要性も議論になりそうだ。

http://www.keidanren.or.jp/policy/cgcb/charter2017.html