HOME4.市場・運用 |温室効果ガス排出量、49カ国が排出抑制達成。日本は出遅れ2020年まで排出増基調。世界全体の排出量ピークアウトが2020年より遅れると、2℃目標達成は微妙。米シンクタンクWRI推計(RIEF) |

温室効果ガス排出量、49カ国が排出抑制達成。日本は出遅れ2020年まで排出増基調。世界全体の排出量ピークアウトが2020年より遅れると、2℃目標達成は微妙。米シンクタンクWRI推計(RIEF)

2017-11-07 21:48:25

WRI1キャプチャ

      温暖化ガスの排出量が2010年までに減少に転じた国は主要な先進国を中心に49カ国に達した。だが、日本は2020年まで達成の見込みがなく、先進国中で「出遅れ国」であることが、米国の環境シンクタンク世界資源研究所(WRI)の分析でわかった。

 WRIは各国のCO2などの排出量データから、排出量が増え続けているか、あるいはピークをつけて減少に転じているかを国ごとに調べた。その結果、10年単位で評価すると、1990年までに排出量がピークアウトした国の数はドイツやノルウェー、ロシア、東欧諸国など19カ国で、世界の排出量に占める比率は、21%だった。

 2000年までに、さらにフランスや英国、スイスなど14カ国がピークをつけ、33カ国に増えた。ただ、排出量はその他の途上国等の排出量が増加したことから、ピークアウトした33カ国全体の世界に占める排出量比率は18%に減少した。

 その後、2010年までには、米国、カナダ、オーストラリアなどが16カ国が新たにピークとなり、国数は49カ国、排出量比率は2000年までよりも倍増の36%となった。しかし、日本は現在もまだ排出量が増えている国として扱われ、韓国、ニュージーランド、マルタの3カ国とともに、ピークアウトは2020年までとみられている。さらに、中国、メキシコ、シンガポール、マーシャル諸島の4カ国は2030年までの達成となる。

赤とオレンジ色の国々は、排出量がまだ伸びている(日本はオレンジ)
赤とオレンジ色の国々は、排出量がまだ伸びている(日本はオレンジ)

 2020年に始まるパリ協定は、温暖化による気候変動などの深刻な被害を避けるためには、産業革命以来の気温上昇を「2℃より十分小さくし、1.5℃にするよう努力する」との目標を定めている。この目標を達成するには、世界全体の排出量を2020年には減少に転じさせ、2040年ごろにはゼロにする必要があるとされる。

 しかし、現在の各国の温暖化ガス排出量の抑制状況だと、世界の排出量は2020年から2030年の間も引き続き増加するとみられる。日本などがピークアウトする2020年で、排出抑制国の世界の排出量に占める割合は40%、中国がピークアウトする2030年でようやく、過半数の60%となる見通しだ。

 国連環境計画(UNEP)の推計では、2020年に世界の排出量が52G㌧でピークアウトし、その後48G㌧(2025年)、42G㌧(2030年)と下がるともっとも低いコストで、2℃目標を達成可能(66%以上の確率)となる。しかし、2025年も、さらに30年も全体の排出量が伸びるシナリオでは、目標達成の可能性は50%に下がる。また達成のためには、急激な排出量削減が求められ、排出コストは急増する。

 このため、 WRIは「世界全体の温室効果ガス排出量が減少に向かう時期を2020年までにできるだけ早くし、その後も大幅に減らす必要がある」と指摘している。日本を含め、韓国、中国という東アジア3カ国の排出量削減の遅れが目立っている。

http://www.wri.org/sites/default/files/turning-points-trends-countries-reaching-peak-greenhouse-gas-emissions-over-time.pdf