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EU欧州委員会、2030年までの新たな自動車CO2排出規制案公表。2段階で、21年目標より30%削減。EV化を加速。世界でもっとも厳しく、日本の基準の緩さが浮き上がる(RIEF)

2017-11-09 12:21:48

EV2キャプチャ

 

  EUの欧州委員会は8日、域内で販売する自動車のCO2排出量を削減する2030年までの規制案をまとめた。規制は二段階で、まず2025年までに21年目標比で15%削減し、さらに30年に30%削減とする。同委員会はこれらの規制によって、2020~30年間に1億7000万㌧のCO2を削減できるほか、GDPは30年に68億ユーロの増加、雇用も7万人増になると試算している。

 

 欧州委員会が公表したのは「Clean Mobiltiy Package」と呼ぶ自動車排ガス規制案。新車へのCO2規制としては世界で最も厳しい水準となる。

 

 EUは現在、乗用車、CO2排出量を1km当たり130gに制限する規制をとっているが、21年には95gに、小型商用車(バン)も147gに規制強化を決めている。今回の30年までの規制案は、21年目標をさらに強化する内容で、EUがパリ協定で約束した2030年に40%削減(90年比)を達成するための主要な政策の柱の一つになる。

 

 ただ、この目標の達成には、これまでの既存技術の延長では難しいとみられる。欧州をはじめ各国の自動車メーカーは、電気自動車(EV)、燃料自動車(FV)などのゼロエミッション車やプラグインハイブリッド車(PHV)などの低排出車への転換を求められる。

 

GM傘下のOpelが公開したEVのChevy Bolt
GM傘下のOpelが公開したEVのChevy Bolt

 

  規制基準は乗用車の販売台数や車種構成にあわせてメーカーごとに異なる。乗用車の21年許容排出量の平均95gは、燃費換算するとガソリン1㍑当たり約24kmに相当する。この30%削減だと、約34kmになる。少量生産メーカー(乗用車1万台、バン2万2千台以下)は適用除外となる。

 

 規制値を達成できなかったメーカーには罰金の規定も設けている。CO2排出量が規制値を1g超えるごとに、その年に販売した新車1台当たり95ユーロ(約1万2500円)の罰金が科せられる。逆に、CO2排出量の少ない車の普及インセンティブとして、EVなどのゼロエミッション車などを30年に30%以上販売したメーカーは全体のCO2排出規制を軽減される恩恵がある。

 

 欧州の基準は21年の95g目標で既に世界で最も厳しい水準にある。日本は20年に122g、中国は同年に117g、米国は25年に97gと設定している。欧州がさらに規制を強化する中で、主要国で相対的に規制が緩い日本の基準強化の議論が高まりそうだ。

 

 欧州委員会のエネルギー問題担当の副委員長、 Maroš Šefčovič氏は「われわれは気候に優しい経済転換の時代に入った。 今回の提案は、EUのメーカーがグローバルな低炭素社会への転換をリードするための条件を設定したといえる。各自動車メーカーに対して、もっとも素晴らしく、もっともクリーンで、もっとも競争力のある車を作ろうという誘因を与えるだろう」と述べている。

 

 ただ、欧州の自動車メーカーからは「現状の延長線上では達成不可能」との厳しい声があがる。非営利団体「クリーン交通の国際協議会(ICCT)」によると、16年の欧州の排出量はトヨタ自動車が105g、独フォルクスワーゲン(VW)や独ダイムラーは120g前後という。ということは、いずれも30年にはそれぞれ現状より約4割の削減が必要となる。

 

 思い切ったEV転換等を進めないと、基準を満たせないが、EV市場では、既存の自動車メーカーだけでなく、英ダイソンや米グーグルなどの他業種からの新規参入のほか、米テスラや中国勢の攻勢も予想される。ハイブリッドで優位を誇ってきた日本勢も、ハイレベルなEV車開発競争に勝てるかどうか、新たなハードルへの挑戦が求められている。

http://europa.eu/rapid/press-release_IP-17-4242_en.htm