HOME10.電力・エネルギー |米情報会社ブルームバーグ創設者のマイケル・ブルムバーグ氏、欧州の石炭火力発電所廃絶に向け、5000万㌦(約56億円)のキャンペーン資金投入を宣言。日本にもお願いします!(RIEF) |

米情報会社ブルームバーグ創設者のマイケル・ブルムバーグ氏、欧州の石炭火力発電所廃絶に向け、5000万㌦(約56億円)のキャンペーン資金投入を宣言。日本にもお願いします!(RIEF)

2017-11-10 16:36:02

Bloombergキャプチャ

 

  ドイツのボンで開いている国連気候変動枠組条約第23回締約国会議(COP23)に出席しているグローバル情報会社Bloombergの創設者で元ニューヨーク市長のMichael Bloomberg氏は、石炭火力発電所の廃絶を進めるため、欧州をターゲットにして5000万㌦(約56億5000万㌦)を投じてキャンペーンを展開すると公表した。同氏はこれまで米国で1億6400万㌦を投じて、石炭火力撲滅活動を展開しており、今回の欧州での展開を踏まえて、世界全体に広げるとしている。日本でもぜひお願いしたい。

 

 Bloomberg氏は、先月、米国で環境団体のシェラクラブが展開する「Beyond Coalキャンペーン」をはじめとするクリーンエネルギー推進活動に、6400万㌦の資金を投じる、と公表している。今回の欧州向けのキャンペーン資金はそれに次ぐ活動となる。資金は同氏が設立した財団Bloomberg Philanthropiesから拠出される見通し。

 

 同氏は、今回のCOP23には、トランプ政権の反パリ協定の動きに対抗する、ビジネス、市民、州、市町村、大学等の官民連携の温暖化対策推進グループの一員として参加している。

 

 bloomberg2キャプチャ

 

 同氏はこれまで米国で2010年以来実施したキャンペーンの成果もあって、国内の石炭火力発電所の半分以上が閉鎖された、と成果を強調している。一方、欧州では気候変動対策の政策は一貫しているが、ドイツやポーランドを中心に、EUのCO2排出量の約20%は依然として石炭火力から排出されている。ドイツは原子力発電所の閉鎖を宣言した。だが、一方で国内で産出する褐炭を燃料とした石炭火力に依存しているとNGOなどから批判されている。

 

 Bloomberg氏によるキャンペーンは、石炭火力発電の操業に反対するNGOや住民団体などの草の根の動きを支援するほか、石炭燃焼による健康被害の研究・調査、排出基準超過の操業に対する訴訟へのファイナンスなどを支援することを目指す。石炭火力の代替策となる再生可能エネルギー発電のコスト低下を促進する資本投資も進める。

 

 政策転換で石炭火力を縮小できることは、最近の英国の実証例でも明確だ。英国では、5年前まで欧州で3番目の石炭火力によるCO2大量排出国だった。電力の40%を石炭火力に依存していた。それがこの5年間で再エネの促進、燃料の天然ガス転換などで2%にまで急低下させることに成功した。

 

 Bloomberg3キャプチャ

 

 Bloomberg氏は「石炭は唯一最大のCO2汚染源だ。もし、石炭を他の燃料に代替できれば、気候変動の様相は大きく変わるだろう」と指摘している。また、石炭の害は温暖化加速の影響だけではない。世界中で毎年、大気汚染による早死者は数百万人に達しており、石炭の影響がもっとも大きい、と付け加えた。「もしあなたが、石炭火力発電所の川下に住んでいたら、確実に寿命は短くなるだろう。今回のキャンペーンは、多くの人々の命を救うためだ」と強調した。

 

 同氏は、米国で相次いだ石炭火力発電所の閉鎖は、政府の指示によりものではなく、市民社会の選択によるもので、そうした市民の判断は、再エネコストの低下によって促進されたとして、キャンペーンの成果を自賛した。

 

 Bloomberg氏の「欧州の石炭火力撲滅宣言」は、欧州の政策が不十分、という点を突いたともいえる。ただ一応、欧州勢も歓迎の声明を出している。パリ協定に基づき設立された「European Climate Foundation」の元仏気候変動大使の Laurence Tubianano氏は、「欧州は依然、石炭火力に相当な依存をしている。しかし、再エネ電力の低廉化の進歩は、脱石炭の大きな機会を提供してくれている。 Bloomberg Philanthropiesとともに、欧州の脱石炭化を促進したい」と共同行動を提案している。

 

 「欧州の次はアジア」。Bloomberg氏は、目下、アジアでの脱石炭火力キャンペーンを展開するパートナーを探しているという。アジアでは、日本を筆頭に、新規石炭火力発電所の建設計画が進行中で、むしろ石炭火力市場は成長しているためだ。

 

 経済成長の著しいアジア諸国にとって、石炭火力はもっとも早く、もっとも安くエネルギーを供給できる、との論法が根強い。だが、 Bloomberg氏はそうした主張を否定する。「石炭火力は、(住民の反対もあって)もっとも早く建設されるわけでもないし、(再エネのコストダウンの早さで)もっとも安くもない。それに多くの人々の健康を奪い、死に追いやっている」と。

 

https://www.bloomberg.org/

https://www.bloomberg.org/press/releases/bloomberg-commits-50m-international-effort-move-beyond-coal/